tsurfの機械設計研究室

サーボモーターやエアシリンダの選定計算なども扱っている技術ブログです

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サーボモーターの選定 モーター仕様の見方と判断の仕方

本ブログの御訪問ありがとうございます

機械設計歴20年以上のtsurfと言います

 

今回は以下に関する記事です

サーボモーターの選定 モーター仕様の見方と判断の仕方

 

 

⇩本記事は以下の方にオススメです⇩

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とある
未経験機械設計者

サーボモーターの設定で
計算以外がわかっても仕様の見方が
わからないから教えてよ

 

 

⇩本記事を読むと以下が わかります⇩

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管理人TSURF

トルク特性の見方
許容慣性モーメントの確認を解説します

●サーボモーターの選定計算は以下の記事を御参照ください

 

 

①結論

サーボモーターの選定において 

せっかく計算した必要トルクの算出結果を最大限に生かすためには

以下が必要となります

●トルク特性の正しい見方と判断

●推奨慣性モーメントの理解と確認

 

今回は 

前回挙げた サーボモーターを使ったボールネジ機構の選定計算の

計算をした後 どうするのか?ということに焦点を当てたいと思います 

 

 

 

②トルク特性の正しい見方

選定計算結果例

例えば サーボモーターの選定計算で 以下の結果となったとします

必要加速トルク   20(Nm)

必要外部負荷トルク 15(Nm)

 

そして 仮選定しているモーターのトルク特性表を見ます

すると 以下のようなトルク特性だったとします

 

f:id:tsurf:20210829211053p:plain

 

選定計算の結果

必要加速トルク 20(Nm)

必要外部負荷トルク 15(Nm)なので以下のように思われがちです

 

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とある
未経験機械設計者

必要トルク 計35(Nm)だろ
このモーターの性能表見ると
仕様上 定格トルク20(Nm)じゃん
だから このサーボ使えないよ

 

しかし 性能表の見方が違います

まず 性能表ですが

連続運転領域と短時間運転領域というものがあります

 

連続運転領域

長時間使用していいトルク帯であり

この領域で運転している限り サーボドライバーなどに

熱によるダメージで破損させない運転領域となります

 

定格トルクは

連続運転でのMAXで発揮できるトルクです

 

短時間運転領域

短時間であれば 運用可能なトルク帯です

短時間であれば サーボドライバーなどにも熱による

ダメージで破損させない運転領域となります

 

瞬時最大トルクは 

この短時間運転領域でのMAXで発揮できるトルクです

 

それぞれの運転領域の特性の利用方法

まず 基本的な知識として

この記事を見て頂くとわかるのですが 等速直線運動そのものは力を必要としません

しかし 地球上で運転する以上 重力加速度による影響を受けます

 

それにより 

水平搬送では摩擦力

垂直搬送では重力が外部の負荷としてかかります

 

つまり等速直線運動では 必要な力は摩擦力のみとなります

 

しかし 加速運動では 

外部の負荷である 摩擦力や重力の他に加速力という力が必要になります

 

文章にすると難しいので 以下の図を御参照ください

 

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※1 

上記図中の外部負荷力とは

垂直搬送であれば 重力

水平搬送であれば 摩擦力です


等速直線運動時間は 摩擦力のみ必要ですが 

加速時間中は 加速力と外部負荷力(摩擦力/重力)の両方が

必要となります

 

 

以上の理由から 以下の表が成り立ちます

運転状態 モーター性能表より   運転必要トルク
(Nm)
トルク使用領域 各運転領域での
最大トルク
(Nm)
加速時間 短時間運転領域  40  35
=20(加速トルク)
+15(外部負荷力)
等速直線
運動時間
連続運転領域  20  15

 

以上より 

加速時間/等速直線運動時間ともに必要なトルクは

モーターの性能を満足しています

 

実はこのケースでは このサーボモーターが使用可能なのです

 

③推奨慣性モーメントの確認

何を確認しているのか?

モーターの性能表に

最大許容慣性モーメントや推奨負荷慣性モーメント比という項目があります

 

この項目は何を確認しているのかというと

いくら 必要トルクを満たしていても 

この推奨慣性モーンメントをオーバーしていると 瞬時に止まれません

 

慣性が大きすぎることにより

行き過ぎてから 戻るという動作になる可能性があります

 

確認方法

機構の全慣性モーメントと 許容慣性モーメントを比較し

許容慣性モーメント以下であることを確認するのですが注意点があります

 

この項目では 以下のように記載していると思います

『ローター慣性の〇〇倍以下』

これは サーボモーターのローターの慣性モーメントに対して

○○倍以下であることを確認します

 

サーボモーターのローターの慣性モーメントは カタログに記載しています

 

 

ボールネジ機構の場合

選定計算の記事で 

機構における全慣性モーメントの算出法を紹介しています

 

この慣性モーメントと 許容慣性モーメントを比較し

オーバーしていないことを確認してください

 

例外

この項目は あくまで 

❝高速で動いて 瞬時に止まる場合に うまく止まれない可能性があります❞

ということです

 

従って 低速搬送で減速時間を多く設けることができる場合

あまり 拘る必要がない場合も多いです

 

もし推奨慣性モーメントをオーバーするようであれば

会社のノウハウを参考するか

会社にノウハウがなければ メーカーに問い合わせをしてください

 

④まとめ

●選定計算をしても モーター性能表の見方を間違えたら意味がありません

●性能表をただしく理解し 短時間運転領域のトルクを利用しましょう

●加速時間のトルクと 等速直線運動の時間をわけます

●加速時間のトルクは 短時間なので 短時間運転領域のトルクと比較します

●等速直線運動のトルクは 長時間なので 連続運転領域のトルクと比較します

●高速搬送で瞬時停止の場合 推奨許容モーメントの確認をしましょう

●オーバーするようでしたらメーカーに問い合わせましょう

 

本記事は以上です

最後まで お読み頂きありがとうございます

 

 

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