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機械設計歴20年以上のtsurfと言います
今回は以下に関する記事です
【機械設計雑記】設計者は駆動系の選定計算を メーカーの選定プログラムに頼ってはいけない理由
⇩本記事は機械設計初心者の方で以下の方にオススメです⇩
いやー 最近は
基礎物理や選定計算を知らなくても
メーカーの選定プログラムがあるから
特に問題ないけど?
⇩本記事を読むと以下が わかります⇩
断言します
メーカーの選定プログラムに
頼ってはいけません
私の体験談をもとに
理由を 説明します
①結論
機械設計者は
モーターのトルク計算やエアシリンダーの推力計算などの際に
メーカーの選定プログラムを使わないほうがいいです
これは
私の 設計者はこうあるべき論を語ろうとしているわけではありません
メーカーの選定プログラムが必ずしも
あなたの計算したい条件なのかが 不明なのです
②事例
概要
メーカーの選定プログラムには
そのメーカー独自の考えが織り込まれている場合があります
私が とある空圧機器メーカーでやり取りした内容を紹介します
この とある空圧機器メーカーは
カタログの選定手順を見て驚きました水平搬送でさえ
摩擦係数を1で計算しろ との記載でした
水平搬送での摩擦は重力より はるかに弱い力です
にも拘らず 摩擦係数1では 重力そのままの計算となり
オーバースペックとなります
とある空圧機器メーカーとのやり取り
とあるエア駆動機器メーカーでのやり取りです
その装置の とある水平搬送部の駆動系に
ストローク調整ユニット付きのロッドレスシリンダーを選定しました
水平摩擦力と推定加速力から 出力径を計算しています
しかし おかしいのです
このエアシリンダーはストローク調整ユニットに
ショックアブソーバを搭載していて
計算上は ショックアブソーバの単体の許容運動エネルギーは十分なのです
しかし エアシリンダーのストローク調整ユニットとしての
ショックアブソーバーの衝撃吸収能力が カタログ上
なぜか 私の想定搬送重量をはるかに下回る重量しか 許容できないのです
ロッドレスエアシリンダーに
ストッパーユニットとして組み込まれているショックアブソーバーは
個別に許容運動エネルギー計算をするのではなく
カタログに許容搬送重量として記載されています
おかいしいと思い 空圧機器メーカーに詳しい話を聞いたところ
その空圧メーカーは 水平搬送でも 摩擦係数を1として計算していました
私は はなっから自分で推力計算をしていたので 気づきませんでした
通常 ガイドを使っている水平搬送の場合
摩擦係数は
ガイドのカタログスペック上 0.05等です
しかし 私は
安全のため 摩擦係数は0.1で計算をしています
つまり このロッドレスエアシリンダーは メーカーの想定スペック自体が
私の想定した重量の1/10程度の搬送しかできないメーカー計算をしているのです
ですので ショックアブソーバの許容搬送重量も
私の想定した重量の1/10程度の搬送しかできない
カタログスペック値だったのです
つまり このような考えが選定プログラムに組み込まれている可能性があります
③この空圧機器メーカーの考え方の問題点
概要
昨今の装置に見る機械設計の状況として
低コスト化 高品質化 短納期化という問題があります
この空圧機器メーカーの考えの問題点を解説していきます
低コスト化
当然といえば 当然なのですが
出力径の大きい エアシリンダを選定すれば それだけコストが高くなります
無駄な搬送力を省き コストを抑えたいから必要なサイズを選ぶのです
これにより わざわざ必要スペックをはるかに上回る出力径のものを
選定し購入しなくてはいけません
高品質化
装置の品質を高めるには
限られたスペース内で 効率よく駆動系を配置しなくてはいけません
そのためには なるべく省スペースであることも求められます
にも拘らず 出力径の大きいものを選んでいると
設置スペースの関係上 できるものもできなくなります
結果 品質が落ちていくことになります
④設計者が選定することの重要性(社内選定ノウハウの構築)
以上のことから 私は駆動系の選定計算は
メーカー選定プログラムや 推奨選定計算に頼るのではなく
設計者がすべきものと考えます
それが メーカー推奨選定によらない 自社の選定ノウハウの構築につながり
結果 低コスト 短納期 高品質が自社のノウハウで可能となります
設計をろくに知らない役員や経営者などが
以下のようなことをよく口にします
メーカー推奨の選定方法でなくては
保障がつかないよ
しかし もはや 昨今の状況を鑑みるに
●短納期
●低コスト
●高品質
●メーカー推奨の選定(保障)
以上の全てを成り立たすのは かなり至難の業で 状況によっては無理です
何かを 捨てなくてはならないのであれば 真っ先にメーカー保証でしょう
メーカー任せの設計をするのではなく
設計者自らの選定で 結果的に自社の選定ノウハウを築くべきなのです
⑤メーカーの選定プログラムを使ってもいい例
メーカーの選定プログラムを使っていい例を紹介します
それは メーカーの選定プログラムに計算式が記載されており
それが 自身の納得のいく場合であることです
その選定プログラムの選定結果と
自身が選定した結果を比較したことがあるのであれば なおいいです
⑥選定計算をできるようになるために
私のブログ記事で恐縮ですが 以下を御参照ください
●物理の基礎に対する理解
●エアシリンダーの推力計算です
●ボールネジ機構のサーボモーターの選定計算です
●ベルト機構のサーボモーターの選定計算です
⑦まとめ
●設計者は駆動系の選定にメーカーの選定プログラムを頼ってはいけない
●なぜなら あなたの求める条件なのかどうかが 不明だからです
●メーカーの考えが 織り込まれている場合もあります
●設計者が自身の計算で選定することが必要
●それが 自身や自社のノウハウになり 低コスト 高品質化が可能となります
●ツールというのは なんでもそうですが 理解して使うことが大切です
本記事は以上です
最後までお読み頂きありがとうございます