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機械設計歴20年以上のtsurfと言います
今回は以下に関する記事です
圧縮エアとエアの流量単位「NL/min L/min(ANR)」と換算式
(補足:エア用流量計)
⇩本記事は初心者設計者の方で以下の方にオススメです⇩

未経験機械設計者
エアの流量単位で NL/minって?
L/min(ANR)って?
換算式も教えて
⇩本記事を読むと以下が わかります⇩
以下を なるべく
わかりやすく説明します
●エアの流量の考え方や単位(ノルマルリッター毎分など)
●NL/min や L/min(ANR)への換算
●<補足として>エア用の流量計の種類と選定時の注意
- ①結論(概要)
- ②圧縮エアについての基礎
- ③流量とは
- ④L/min ⇒ NL/minの換算式
- ⑤L/min ⇒ L/min(ANR)の換算式
- ⑥換算式を導く
- ⑦エア消費量での計算例
- ⑧補足:エア用流量計解説フロート式面積流量計
- ⑨エア用流量計解説デジタル式熱式流量計
- ⑩まとめ
①結論(概要)
実際に流れるエアの量について、みなさん深く考えたことがありますか?
例えば5L/minと一言でいいますが、圧力が0.1MPaと0.5MPaでは
実際に流れているエアの量は違いますよね?
なぜなら
0.1MPaより 0.5MPaのほうが エアが圧縮されているから
圧力が高いのです。
つまり 0.5MPaのほうが、エアが圧縮されている分
エアの量が多いことになります。
では 実際に流れているエアの量を 直観的に理解する方法はないのでしょうか?
それが以下の単位なのです
- NL/min (ノルマルリッター/毎分)
どんな圧力 温度でも大気圧 温度0℃ 湿度0%に換算
- L/min(ANR) (リッター毎分ANR)L/min(ANR)
どんな圧力 温度でも大気圧 温度20℃ 湿度65%に換算
これなら 圧縮エアが どんな状態だろうと、直観的に実際に流れている
(消費している)エアの量を理解することができます
本記事は流量計についても補足します
実際に流れているエアの量を測定するためのエア用流量計の種類を解説します
②圧縮エアについての基礎
気体と液体の大きな違いは
気体は分子間の距離が大きいので 外力を加えれば、
大きく圧縮することが可能です。
有名な式ですが、以下圧力 体積 温度の関係式
PV=nRT
より P=nRT/V
P | : | 圧力 | (Pa) |
V | : | 体積 | (m³) |
n | : | モル数<気体分子の量> | (mol) |
R | : | 気体定数 | (J/(mol・k) |
T | : | 絶対温度 | (K) |
上記の式より 体積一定 温度一定でも
モル数(=気体の分子の量=エアの量)を大きくすれば
圧力も大きくなります
それにより 同じ体積でも 圧力によって実際のエアの量が違ってきます
どういうことかと言うと 以下の図1と図2の立体の枠は どちらも
ある気体体積V’(m3)とします
中にはいっている●は気体の分子とします
すると 図1と図2は同じ体積V1のはずなのに モル数
(=気体の分子の量=エアの量)が大きく違います
そして この体積当たりの空気の分子の量の違いが、圧力の違いとなります。
立体の中に 空気分子が多ければ多いほど圧力が、高いということになります。
同じ体積でも圧力や温度により、エアの量はまったく異なるということです
③流量とは
概要
例えば エアブローや エアパージなどでは
どのくらいエアを使っているのか 数値により管理したい場合があります
そこで 毎分あたり どの程度の体積が
移動するかで その流量を測ります(単位はL/min)
ただし注意ですが
②で説明したように 同じ体積であっても 圧力や温度によって
エアの量は違ってきます
その時に 圧力や温度まで考慮するかしないかで単位は以下に分かれます
エアの流量の単位L/min
どのような温度 圧力の条件でも 毎分あたりの体積しか見ていません
つまり先述の以下の図1と図2の流量は同じになります
NL/minとL/min (ANR)
どのような温度 圧力でも
以下のぞれぞれの条件に換算します
NL/min・・・・・大気圧 温度0℃ 湿度0%
L/min(ANR)・・・大気圧 温度20℃ 湿度65%
つまり どういうことかというと
先述の圧力の違う大気状態では 同じ体積であっても流量は
異なってくるということです
これにより 換算条件をちゃんと理解していれば
実際に流れているエアの量を直観的に理解ができるようになります
特にお客様から流量計の設置を要求され 理由がエアの消費量を
知りたい場合 これらの単位のものを提示しなくてはいけません
④L/min ⇒ NL/minの換算式
NL/minの条件の一つに『湿度0%』がありますが
湿度0%の計算までは、できませんので湿度による影響は誤差とします。
NL/minの単位で表される温度や圧力を、加味している流量を
実質流量としてV1とします。
L/minの単位で表される体積のみを見ている流量を
体積流量としてV0とします。
V1 | : | 実質流量 | (NL/min) |
T0 | : | 温度 | (℃) |
V0 | : | 体積流量 | (L/min) |
P0 | : | 設定圧力 | (MPa) |
⑤L/min ⇒ L/min(ANR)の換算式
L/min(ANR)は、湿度も気温も通常の状態です。
L/min(ANR)の単位で表される温度や圧力を、
加味している流量を 実質流量としてV2とします。
L/minの単位で表される体積のみを見ている流量を
体積流量としてV0とします。
V2 | : | 実質流量 | (NL/min) |
T0 | : | 温度 | (℃) |
V0 | : | 体積流量 | (L/min) |
P0 | : | 設定圧力 | (MPa) |
黄色の塗りつぶしの箇所が違いますので、ご注意願います。
理由は 換算式を導くの最後で解説します
⑥換算式を導く
(お急ぎの方を読み飛ばしても構いません)
NL/minの場合で解説します。
換算式の導入式は、L/min(ANR)でも基本的な考えは同じです。
まず 流量は1min当りの体積なので、
単純に流量を体積に置き換えて考えます。
L/minで表される体積のみの流量を体積流量としてV0とします。
V0 | : | 体積流量 | (L/min) |
TK'0 | : | 体積流量の時の気体の絶対温度 | (k) |
P'0 | : | 体積流量の時の気体の絶対圧力 | (MPa) |
NL/minで表される温度と圧力を考慮した流量を実質流量としてV1とします。
V1 | : | 体積流量 | (NL/min) |
TK'1 | : | 実質流量の換算条件である絶対温度 | (k) |
P'1 | : | 実質流量の換算条件である絶対大気圧 | (MPa) |
<注> 絶対温度と絶対圧力に関しては 後述します
すると、以下の式が成り立ちます
P'0V'0=nR'T'0 ・・・式1
P'1V'1=nR'T'1 ・・・式2
(この時の気体定数R’は体積の単位をLに換算 圧力をMPaの状態のもの)
この時 エアのモル数は同じで、気体定数も当然同じなので
次式の式3が成り立ちます
(P'0V'0)/T'0=(P'1V'1)/T'1 ・・・式3
つまり 以下の式4となります。
・・・式4
ここで 圧力はゲージ圧ではなく、絶対圧となります。
絶対圧とは 絶対真空を0MPaとします。
すると、大気圧は0.1MPaとなります。
絶対大気圧 P'1=0.1(MPa)
同様に
絶対測定圧 P'0=0.1+ P0(MPa)<P0:V0測定時のゲージ圧>
温度T1及び T0は絶対温度で、表現します。
全体温度とは 全ての分子が、運動を止める絶対零度のことで、
摂氏にすると-273℃となります。
絶対温度はこの摂氏-273℃を0K(ケルビン)とします
つまり、摂氏0℃は、絶対温度273Kとなります。
絶対温度(摂氏0℃) TK'1=273(K)
同様に
絶対温度(常温) TK'0=273+ T0(K)(T0:常温摂氏25℃)
補足として L/minの場合 換算条件温度が摂氏20℃なので
この換算条件温度T’2の値が273+20=293なのです
このP’0 P’1及び T’0 T’1を式4に代入します。
すると 冒頭で紹介した式となります。
⑦エア消費量での計算例
装置のエア消費量を<NL/min>で求められた時の
エアシリンダーのエア消費量計算例です。
⇩以下の記事を御参照願います⇩
⑧補足:エア用流量計解説
フロート式面積流量計
概要
以下の図3のようにテーパー管の中にフロートがあり
メモリがふってあります
この流量により フロートの位置が上下し その時のメモリから
流量を測定できます
以下の注意点が必要です
注意点1 使用に関する制限
あらかじめ使用圧力 使用温度などの使用条件が決まっていて
その使用条件に合致したフロート式面積流量しか使用不可です
面積流量計で メモリの測定単位が
NL/min(ノルマルリッター毎分)などである場合ですが
フロートの形状やテーパー管の角度の設計によって
エアの使用圧力や使用温度が決まっています
従って エアの規定圧力と規定温度 以外の条件のエアだと
正しく ノルマルリッター毎分が測定できません
つまり 使用は不可となります
注意点2 設置法の制限
垂直姿勢にして エアが下から上に流れるように設置しなくてはいけません
(上図 図3参照)
なぜなら フロートは重力を利用しているからこそ
流量が0の時にメモリが0のところに落ちてくるからです
横姿勢と上下逆では測定はできないことになります
フロート式面積流量計のメリット
- 既存品が使用条件にあっていれば安い
- 電気が不要 つまり電気が使用不可の箇所(防爆)に使用可
フロート式面積流量計のデメリット
- 製品自体が大きい
- あらかじめ 圧力 温度などがわかっているラインのみ使用可
- フロートを目で見るので 角度によって そこそこの誤差がでる
- 垂直配管で かつ 下から上にエアが流れるラインがなくてはいけない
使用用途例
接点や それほど精度を必要としない流量の調整や確認などに使用します
例としては 以下があります
エアブロー、 エアパージなど
⑨エア用流量計解説
デジタル式熱式流量計
概要
圧縮エアに対して 一部的に極微量の熱を与えます
その熱の伝搬具合が
エアの圧縮の程度(=エア圧)により変化する特性を利用します
圧縮の程度(=エア圧)による変化を出力特性として出力させます
そのことにより質量(=圧力を考慮した流量)を測定できる質量流量計です
得られた出力をデジタルとして表示させますので
単位はNL/min L/min(ANR)などの表示に変更できるものもあります
電気を使うことにより 使える用途の幅も広がります
メリットで説明します
メリット
- 小型
- 圧力と温度を あらかじめ 設定できないラインで使用可能
- 取り付け姿勢は自由
- スイッチ出力が可能
- アナログ出力が可能
デメリット
- 接点をとる とらないに関わらず必ず電気が必要
- フロート式に比べると高額
使用用途例
- スイッチ出力により セーフティ回路を組み込む場合
- アナログ出力により タッチパネルに流量を表示したい場合
- アナログ出力により エア流量のフィードバック制御をしたい場合
- 圧力変化にも対応可なので エア流量を圧力で変化させたい場合の流量測定
⑩まとめ
●エアの流量
体積しか見ない測定法と
圧力や温度を考慮した実際に流れてるエアの量を
測定する測定法が存在します
●エアの流量単位
ノルマルリッター毎分(NL/min)
リッター毎分ANR(L/min ANR)は
圧力や温度を考慮し実際に流れてるエアの量を測定する単位です
●流量計の種類
フロート式面積流量計とデジタル式熱式質量流量計があります
フロート式面積流量計は安いですが あらかじめ条件が決めらています
デジタル式熱式流量計は 質量流量計です
本記事は以上です
ここまでお読み頂きありがとうございます