tsurfの機械設計研究室

サーボモーターやエアシリンダの選定計算なども扱っている技術ブログです

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圧縮エアとエアの流量単位「NL/min  L/min(ANR)」と換算式

本ブログの御訪問ありがとうございます。
機械設計歴20年以上のT.surfと言います。

 

今回は以下に関する記事です。

圧縮エアとエアの流量単位
「NL/min  L/min(ANR)」と換算式

  

⇩本記事は初心者設計者の方で以下の方にオススメです⇩

f:id:tsurf:20210605171303p:plain
とある
未経験機械設計者

エアの流量単位で NL/minって?
L/min(ANR)って?
換算式も教えて

 

⇩本記事を読むと以下が わかります⇩

管理人T.Surf
  • エアの流量の考え方や単位
  • NL/minやL/min(ANR)の変換

を解説します。

 

 

①概要

圧縮エアは、圧力によって流れているエアの量に
違いがあります。

 

例えば5L/minと一言でいいますが、
圧力が0.1MPaと0.5MPaでは、
実際に流れているエアの量は違いますよね?

 

0.1MPaより 0.5MPaのほうが、
エアが圧縮されている分
エアの量が多いことになります。

 

では 実際に流れているエアの量を、
直観的に理解する方法はないのでしょうか?
それが以下の単位なのです。

  • NL/min  (ノルマルリッター/毎分)
    どんな圧力 温度でも大気圧 温度0℃ 湿度0%に換算
  • L/min(ANR)  (リッター毎分ANR)L/min(ANR)
    どんな圧力 温度でも大気圧 温度20℃ 湿度65%に換算

これなら 圧縮エアが、どんな状態だろうと
直観的に実際に流れている(消費している)エアの量を
理解することができます。

 

次章から圧縮エアの基礎知識を理解いただいて後、
L/min⇒NL/min
L/min⇒L/min(ANR)の換算式を解説します。

 

 

②圧縮エアについての基礎

気体と液体の大きな違いは分子間の距離です。

気体は分子間の距離が大きいので 外力を加えれば、
大きく圧縮することが可能です。

液体は外力を加えても それほど圧縮しません。

 

有名な式ですが、以下圧力 体積 温度の関係式

PV=nRT
より P=nRT/V

圧力 (Pa)
体積 (m³)
モル数<気体分子の量> (mol)
気体定数 (J/(mol・k)
絶対温度 (K)

 

上記の式より、体積一定  温度一定でも
モル数(=気体の分子の量=エアの量)を大きくすれば 
圧力も大きくなります。

 

それにより 
同じ体積でも、圧力によって実際のエアの量が違ってきます。

 

どういうことかと言うと、
以下の図1と図2の立体の枠は どちらも
ある気体体積V’(m3)とします。

f:id:tsurf:20200821163118p:plain

中にはいっている●は気体の分子とします。
すると、図1と図2は同じ体積V1のはずなのに 
モル数(=気体の分子の量=エアの量)が大きく違います。

 

そして、この体積当たりの空気の分子の量の違いが
圧力の違いとなります。

立体の中に 空気分子が多ければ多いほど圧力が、
高いということになります。

同じ体積でも圧力や温度により、
エアの量はまったく異なる
ということです

 

 

③流量とは

概要

例えば エアブローや、エアパージなどでは
どのくらいエアを使っているのか?
を、数値により管理したい場合があります。

 

そこで 毎分あたり どの程度の体積が
移動するかで、その流量を測ります。(単位はL/min)

 

ただし注意ですが 
②で説明したように、同じ体積であっても圧力や温度によって
エアの量は違ってきます。

 

その時に、
圧力や温度まで考慮するかしないかで単位は以下に分かれます。

 

エアの流量の単位L/min

どのような温度  圧力の条件でも、毎分あたりの体積しか
見ていません。

つまり先述の以下の図1と図2の流量は同じになります

f:id:tsurf:20200821163118p:plain

 

NL/minとL/min (ANR)

どのような温度 圧力でも 
以下のぞれぞれの条件に換算します。

NL/min・・・・・大気圧 温度0℃ 湿度0%
L/min(ANR)・・・大気圧 温度20℃ 湿度65%

  

つまり どういうことかというと
先述の圧力の違う大気状態では 同じ体積であっても流量は
異なってくるということです  

f:id:tsurf:20200821163118p:plain

 

これにより、換算条件をちゃんと理解していれば
実際に流れているエアの量を、
直観的に理解できるようになります。

 

特にお客様から流量計の設置を要求され、
理由がエアの消費量を知りたい場合、
これらの単位のものを提示しなくてはいけません。

 

 

④L/min ⇒ NL/minの換算式

NL/minの条件の一つに『湿度0%』がありますが
湿度0%の計算までは、できませんので
参考計算値として湿度による影響は誤差とします。

NL/minの単位で表される温度や圧力を、加味している流量を 
実質流量としてV1とします。

L/minの単位で表される体積のみを見ている流量を 
体積流量としてV0とします。

 

f:id:tsurf:20220323205437p:plain

1 実質流量 (NL/min)
0 温度 (℃)
0 体積流量 (L/min)
0 設定圧力 (MPa)

 

 

⑤L/min ⇒ L/min(ANR)の換算式

L/min(ANR)は、湿度も気温も通常の状態です。
細かな湿度の条件までは、計算できませんので
参考計算値として湿度による影響は誤差とします。

 

L/min(ANR)の単位で表される温度や圧力を、
加味している流量を 実質流量としてV2とします。

L/minの単位で表される体積のみを見ている流量を 
体積流量としてV0とします。

 

f:id:tsurf:20220324181346p:plain

 

2 実質流量 (NL/min)
0 温度 (℃)
0 体積流量 (L/min)
0 設定圧力 (MPa)

 

黄色の塗りつぶしの箇所が違いますので、ご注意願います。
理由は 換算式を導くの最後で解説します

 

 

⑥換算式を導く

(お急ぎの方を読み飛ばしても構いません)

NL/minの場合で解説します。
換算式の導入式は、L/min(ANR)でも基本的な考えは同じです。

 

まず 流量は1min当りの体積なので、
単純に流量を体積に置き換えて考えます。

 

L/minで表される体積のみの流量を体積流量としてV0とします。

0 体積流量 (L/min)
K'0 体積流量の時の気体の絶対温度 (k)
P'0 体積流量の時の気体の絶対圧力 (MPa)

 

NL/minで表される温度と圧力を考慮した流量を実質流量としてV1とします。

1 体積流量 (NL/min)
K'1 実質流量の換算条件である絶対温度 (k)
P'1 実質流量の換算条件である絶対大気圧 (MPa)

<注> 絶対温度と絶対圧力に関しては 後述します

 

 

すると、以下の式が成り立ちます

P'V'=nR'T'0 ・・・式1

P'V'=nR'T'1 ・・・式2

(この時の気体定数R’は体積の単位をLに換算 圧力をMPaの状態のもの)

 

この時 エアのモル数は同じで、気体定数も当然同じなので
次式の式3が成り立ちます

(P'V')/T'=(P'1V'1)/T'1 ・・・式3

 

つまり 以下の式4となります。

f:id:tsurf:20220323221210p:plain・・・式4

 

ここで 圧力はゲージ圧ではなく、絶対圧となります。
絶対圧とは 絶対真空を0MPaとします。
すると、大気圧は0.1MPaとなります。

絶対大気圧 P'1=0.1(MPa)

同様に
絶対測定圧 P'0=0.1+ 0MPa)<P:V測定時のゲージ圧>

 

温度T1及び T0は絶対温度で、表現します。
全体温度とは 全ての分子が、運動を止める絶対零度のことで、
摂氏にすると-273℃となります。

絶対温度はこの摂氏-273℃を0K(ケルビン)とします
つまり、摂氏0℃は、絶対温度273Kとなります。

絶対温度(摂氏0℃) TK'=273(K)
同様に
絶対温度(常温) TK'0=273+ T0(K)(T0:常温摂氏25℃)

 

補足として L/minの場合 換算条件温度が摂氏20℃なので
この換算条件温度T’2の値が273+20=293なのです

 

 

このP’0 P’及び T’0 T’を式4に代入します。

すると 冒頭で紹介した式となります。

 

 

⑦エアシリンダーのエア消費量 計算例

装置のエア消費量を<NL/min>で求められた時の
エアシリンダーのエア消費量計算例です。

⇩以下の記事を御参照願います⇩

 

 

⑧補足:エア用流量計解説

⇩以下の記事を御参照ください⇩

 

 

⑨まとめ

●エアの流量

体積しか見ない測定法と
圧力や温度を考慮した実際に流れてるエアの量を
測定する測定法が存在します。

 

●エアの流量単位

ノルマルリッター毎分(NL/min)
リッター毎分ANR(L/min ANR)は
圧力や温度を考慮し実際に流れてるエアの量を測定する単位です。

 

本記事は以上です。
ここまでお読み頂きありがとうございます。

 

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