tsurfの機械設計研究室

サーボモーターやエアシリンダの選定計算なども扱っている技術ブログです

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【強度計算の基礎 補足】断面2次モーメント よくある誤解 部品の組み合わせによる強度

本ブログの御訪問ありがとうございます

機械設計歴20年以上のtsurfと言います

 

今回は以下に関する記事です

【強度計算の基礎 補足】

断面2次モーメント よくある誤解 部品の組み合わせによる強度

  

⇩本記事は以下の方にオススメです⇩

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とある
未経験機械設計者

曲げに対する強度ってさ
部品の組み合わせの場合
どうなんよ

 

⇩本記事を読むと以下が わかります⇩

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管理人TSURF

部品の高さが高ければ
断面2次モーメントは強くなりますが
意味のないケースを紹介します

 

曲げの強さである 断面2次モーメントの概念については

以下の記事をご参照ください

 

①結論

曲げの強さである 断面2次モーメントは 

高さが高くなれば 高さの3乗に比例して強くなります

 

ただし 条件があり 部品が削り出しなどで 一体物の場合です

 

一体物でない場合 

例えば ボルト締結や 溶接など 複数部品の締結からなる場合

いくら それで高さを出しても 高さの3乗の比例とはなりません

それぞれの合算になってしまいます

 

理由は 

複数部品からなる場合 図心は それぞれの部品毎に持つからです

 

今回は 一体物でない場合 特に意味のない事例を紹介します

 

②技術の役員からの奇妙な指示

以前勤めていた会社で こんなことがありました

 

長い丸パイプを並列に並べて使っている装置(図1)

で自重による撓みが見た目が悪かったのですが 

特に機能に問題がないので そのままで行こうとしていました

f:id:tsurf:20210808094258p:plain

 

ある役員から こうすれば

強くなり撓まないと 指示されたのが以下の図2のように丸パイプを

垂直配列にしたものでした

 

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以前勤めた会社の
とある役員

こうすれば強くなるんだよ⇩⇩

f:id:tsurf:20210808094812p:plain

 

 

 

③今回の指示の間違いを解説

役員の指示のどこが間違いなのか

 以前の記事で 断面2次モーメントは高さの3乗に比例すると

記載しました すると以下のようになるのでは?と思う方もいると思います

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とある
未経験設計者

高さが(2d+h)になるじゃんか?
強さも跳ね上がるだろ
自重撓みも解消されんじゃね?

 

しかし 考えてみてください2d+hの高さの図心はどこになるでしょうか?

ちなみに前回の記事でをおさらいしましょう

 

曲げとは

曲がる内側が圧縮を受け外側が引っ張りを受けます

しかし 図心は伸び縮みを受けません

  

図心はそのままで そこから上下が 圧縮 引っ張りを受けるのです

 

ですので 図心が大事なのでですが 図心はどこでしょうか?

 

 

高さが(2d+h)となる条件は図5になるのですが

ここには 形状が何もありません 

つまり ここには 図心自体がないのです

 

正解は図6です

 

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これだと それぞれに図心を持つ丸棒が2ヶあり それぞれが撓むという

今までと まったく同じ結果になってしまいますので 意味がありません

 

 

垂直配列で自重撓みが改善する可能性の例

高さが2d+hとなり断面2次モーメントが 

跳ね上がる条件は図7ですが この部品が 削り出しの場合のみとなります

 

図7の断面形状を 溶接で製作した場合 

図心は それぞれの部品が持つこととなりますので それぞれの部品の

断面2次モーメントの合算となります 

 

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 これが 撓みがなくなるかもしれないメリットを打ち消す以上の

 コスト高のデメリットがあったのでやりたくなかったのです

 

④CADで断面2次モーメントを自動計算させる場合の注意点

実は 断面2次モーメントはCADであれば 簡単に算出できます

CADによってはハッチングを使う場合もあります

 

ハッチングとはどういうものかというと 

図8のように閉じられた図形内に斜線をひくことです

断面部だったり なにか強調したかったりする場合に使いますが

CADによっては これで 断面の内部の全ての微小面積と図心を認識でき

断面2次モーメントを計算できます

 

   f:id:tsurf:20200725092610p:plain

しかし注意点として

CADによってはハッチングを削ることができます

例えば 以下のように修正する場合は注意が必要です     

   f:id:tsurf:20200725093451p:plain

つまり断面を2つに分けた時に ハッチングを作り直さず

削るなどした場合には この上下のハッチングは同一要素である

場合があるのです

 

CADには同一要素であれば それが離れているかくっついて

いるかの認識などできません

 

なので 下記の図10のような図心認識をし 

かつ高さを(2h+Y)と認識して なかなか 素晴らしい値の

断面2次モーメントを算出してしまいます

 

しかし当然まちがえで 正解は図11の個別図心のほうです 

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CADのハッチングなどを使い 断面2次モーメントを自動計算

させる場合は注意してください

 

⑤まとめ

  • 曲げ強度に対する誤解として 実体験をベースに解説しまいした
  • 曲げ強度を強くするのであれば 部品は 一体物がベストです
  • 複数部品からなる場合は それぞれの部品の断面2次モーメントの合算になります
  • CADでもハッチング機能を使えば 断面2次モーメントを算出できます
  • ただし ハッチング機能を間違って使うと 正しい断面2次モーメントは
    算出できません

 

本記事は以上です

最後までお読み頂きありがとうございます

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