tsurfの機械設計研究室

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【機械設計の3DCAD】ヒストリーCADのパラメトリック設計と、その根幹をなす拘束系の2D機能

本ブログの御訪問ありがとうございます。
機械設計歴20年以上のT.surfと言います。

 

今回は以下に関する記事です。
【機械設計の3DCAD】
ヒストリーCADのパラメトリック設計と、
その根幹をなす拘束系の2D機能

 

⇩本記事を読むと以下が わかります⇩

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管理人T.surf

今回の記事では
ヒストリー系CADに
焦点を当て
パラメトリック設計
について解説します。

本記事は以下の記事の補足解説記事です。

 

 

①結論

3DCADを導入しようとしている企業様に向けて
3DCADについての解説記事です。

 

3DCADには以下の種類があります。

  • ヒストリー系CAD
  • ノンヒストリー系CAD

今回の記事ではヒストリー系CADについて解説します。

 

ヒストリー系CADについて、解説するのは
難しいので順を追って解説します。

 

注意点として
ヒストリー系CADによるパラメトリック設計の仕組みの
解説を読んでいただくと一見 何やら凄い高性能で
次世代のCADのように見えます。

 

この記事の解説を読んで、
ヒストリー系CADのパラメトリック設計の見た目に
騙されないようにしてください。

 

本記事はあくまでパラメトリック設計を淡々と
解説するものです。

このパラメトリック設計を知って頂いた後
デメリットや使い勝手の悪さは以下の記事で解説します。

 

 

②ソリッドを作成するための2D

通常の3DCADにおいて、ソリッドを作成する際に、
3D上の2D平面に断面を作成して、それを押し出したり、
回転させたりして作成します。

 

そして、ヒストリー系CADにおける
ソリッドを作成するための3D上の2D平面を
スケッチと言います。

 

ヒストリー系CADにおけるスケッチの2D機能には
オフセットなどの通常の2DCADの機能がありません。

あくまで寸法拘束や幾何拘束で
形をつくります。

 

以下、ヒストリー系CADのスケッチ上の2D機能を
拘束系の2Dと呼びます。

 

例えば 以下のような断面を作成したいとします。

 

まず 3D上の平面にスケッチを開きます。

拘束系の2Dの場合、
オフセットなどがありませんので、まずは適当に書きます。
こんな感じでしょうか。

これを、垂直拘束や直交拘束などの幾何拘束をつけて
以下のように、ある程度形を整えます。 
幾何拘束をつけると線要素が拘束通りになります。

そして、寸法拘束を入れてきます。
この時点では適当に書いているので寸法自体は
以下のようになります。

しかし、
この寸法値を変更することにより
形状も追従します。

寸法拘束の寸法値変更により、目的の形を作成します。

 

 

③ソリッドの作成と部品配置

ソリッドの作成

さきほど解説したスケッチで作成された
断面を押し出しや回転によってソリッドを作成します。

先ほどの断面を押し出してみましょう。
以下のようになります。

スケッチとソリッドはリンクしています。
なのでソリッドとスケッチは同じパーツファイルに
保存されます。

 

 

ヒストリー系CADの
組立データー

それでは、アセンブリはどうするのでしょうか?

管理人が強く推奨するICADのような
ノンヒストリー系のCADであれば
アセンブリファイルでトップダウン設計を行います。

アセンブリファイルの中で3D上の2D平面で2Dレイアウトを
行い、この時点で

  • 部品の形状
  • 装置全体に対する部品の絶対位置

上記が決まります。


しかし、ヒストリー系CADは、
根本思想が間違っているので
部品を設計してそれを組み立てる
ボトムアップ設計

と相性がいいです。

 

では、ヒストリー系CADで いくつかの部品を
組立データーに部品を配置していきましょう。

2Dによる全体構想がなくて、どうやって部品を
配置できるのか管理人は不思議ですが・・・

まずは、適当に配置をします。

次に位置拘束により部品を配置します。 
まずは面の同一平面拘束で前面を揃えますか。
(順番はどうでもいい)

L型部品と立法体部品のクリアランスを
寸法拘束で規制します。

このように ヒストリーCADでは、
何故かすでにレイアウトされているかのように、

位置拘束によって
部品と部品の相対位置

で部品の配置を決めていくのです。

 

 

④2Dから3Dを作成するので・・・

勘のいい方ならお気づきでしょう。
ソリッドは断面の押し出しや回転によって作成されます。

ヒストリー系CADでは、
ソリッドとスケッチがリンクしていますので、
寸法値を以下に変更すると・・・


ソリッドに反映されます。


ヒストリー系CADは、前述のとおり、部品の位置も
レイアウトで配置するのではなく、
部品同士の位置拘束を設定して配置しますので

例えは、以下のように部品同士を
5mmクリアランスをキープすると位置拘束にすると・・

組立データの位置拘束により位置も変更されます。


この寸法拘束の数値変更による
組立データーまでの反映こそが
ヒストリー系CADのパラメトリック設計
となります。

要は設計変更が楽になるという
コンセプトなのです。

しかも、一見最新鋭っぽく見えるのですが、
騙されてはいけません!!

パラメトリック設計は
時間が掛かる上に設計変更が楽になんてなりません。
場合によっては、
拘束を全て消さなくてはいけなくなります。

 

 

⑤ヒストリー系CADのスケッチについて捕捉

スケッチでは、
例の拘束系の2Dを使い断面を作図していきます。

しかし前述のとおり、
ソリッドとスケッチはリンクしています。

なので原則として
スケッチは部品ファイルにのみ存在します。

 

リンクのあるデータが
別々のファイルにあるというのもうまくないですからね。

 

原則としてと記載したのには理由があり、

部品ファイルにしかスケッチがない
=アセンブリファイルに2D作図機能そのものがない

ということになります。

 

これはどういうことを意味するのか?

アセンブリ上で2Dレイアウトによる
トップダウン設計ができない

ことを意味します。

 


実際 初期のヒストリー系CADは、
2Dレイアウトによるトップダウン設計が
できなかったのです。

 

機械設計者から
苦情が多数寄せられたのとは想像に固くありません。

 

なので、
最近のヒストリーCADは、
2Dレイアウト機能を実装しています。

 

しかし、それでもトップダウン設計はやりづらいです。

なぜなら、
CADメーカー側トップダウン設計を理解していないため

  • 2Dレイアウトに自由度がないことに変わりない
  • 2Dレイアウトに欲しい機能がない
  • 2D機能が拘束系の2D

という3重苦の有様

 

 

 

⑥まとめ

  • ヒストリー系CADはパラメトリック設計用
  • ソリッド作成のための断面部品の位置
    全てに拘束が掛かる
  • 従って部品のスケッチを変更すると、
    部品の形状はもちろん
    アセンブリファイルの部品位置まで変更がされる

これが、ヒストリー系CADのバラメトリック設計です。
なぜ、こんな仕様になっているのか?

それは、設計変更や修正が楽になる
というコンセプトなのですが・・・

騙されてはいけません。
パラメトリック設計は、各拘束操作が大変で煩わしい上に
決して設計変更が楽になりません。

 

本記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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