tsurfの機械設計研究室

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【機械設計3DCAD】ヒストリーCADをおススメできない理由:パラメトリック設計編

本ブログの御訪問ありがとうございます。
機械設計歴20年以上のT.surfと言います。

 

今回は以下に関する記事です。
【機械設計の3DCAD】
ヒストリーCADをおススメできない理由
パラメトリック設計編

 

⇩本記事を読むと以下が わかります⇩

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管理人T.surf

今回の記事では
ヒストリー系CADの
パラメトリック設計
がいかに使えないか
について解説します。

本記事は以下の記事の補足解説記事です。

 

 

①結論

ヒストリー系CADによる
パラメトリック設計は3D作成が大変です。

 

しかし、その割にコンセプトである
『設計変更や修正が楽になる』
というのは、ありえません。

 

大規模アセンブリであればあるほど
大変更であればあるほど

ヒストリーCADが提案するパラメトリック設計が
うまくいくことのほうが稀です。

 

 

考えてもみてください。

  • パーツファイルには、
    ソリッド作成のためのスケッチで
    寸法拘束と幾何拘束 全てを設定しなくては
    いけません。
  • アセンブリファイルには、
    全ての部品に位置拘束を設定しなくては
    いけません。

 

部品10個程度の簡単なものならともかく
部品点数1000 100000越えのような
大規模アセンブリの場合では一苦労です。

 

しかも、パラメトリック設計による設計変更ったって、
どこをどう直せば望み通りの設計修正や変更できるの
でしょうか?

 

その装置を設計してモデリングまでした本人なら
(かろうじて)わかるでしょう。

 

しかし別の設計者が簡単な設計変更を担当したとして
わかるでしょうか?

最終的には設計変更の業務自体はこなせるとしても、
理解するのに時間がかかります。

 

 

②設計者ごとに拘束の掛け方が違う

例えば円柱を作るとします。

円から押し出すのか

長方形を回転させるのか


上記の作成の差異により、設計者で違いがでてきます。

大部分の人は円から押し出すんでしょうが、
そういうことを言いたいのではなく、
こんな簡単なことで違いが出てくるのです。

 

これがノンヒストリー系のCADであれば
どちらの方法で作っても履歴が残らないので、
結果は同じです。

 

しかし、ヒストリー系のCDDの場合、
リンクしている断面が違いますので、
設計変更のやり方に
大きな違いがでます。

 

こんな簡単な事でさえ人による違いがでるのですから、
これが‥

  • 部品が複雑な形状になればなるほど
    寸法拘束や幾何拘束の仕方に違いが出てくる
  • 大規模アセンブリになればなるほど
    位置拘束の仕方に違いがでてくる

という結果になります。

なので、いくら簡単な設計修正でも他の設計者が
なかなか簡単にはできないのです。

 

そして重要なことをいいますが、

先ほど

その装置を設計してモデリングした設計者なら
どこをいじればどうなるのか(かろうじて)わかるだろう 

と言いました。

しかし、実際には
大規模アセンブリになればなるほど、
本人ですらわからなくなります。

 

結果 設計変更が楽になるとはとても言えません。

 

これを防ぐにはどうしたらいいんでしょうか?
解決策はありません。

社内運用でCADのルールを決めてしまう
という手を使えば多少問題の緩和に効果があるでしょう。

ですが、そんなものは絵に描いた餅にすぎません。
徹底なんてできっこないからです。
誰かチェックでもするんでしょうか?

CADの社内運用を作るのでさえ困難でしょう。
どうしてCADごときでそこまでのマンパワーを
割かなくてはいけないのでしょうか?

 

 

③パラメトリック設計は大変な割に設計変更に対して万全ではない

パラメトリックが
うまく機能しない一例

例えば以下のようなスケッチからソリッドを作ります。

そして、
アセンブリファイルで以下のように部品を組みます。

 

しかし設計変更の必要が出ました。
L型部品の以下の赤の部分を10mm伸ばします。

では パラメトリック設計とやらで変更ましょう。
以下の赤枠の寸法を30に変更すればいいはずです。


しかし、今回の場合は以下のようになってしまいます。

何故か?

このL型部品は、パーツファイルで独自の
基準点(原点)を持っています。

この基準点(原点)を使い、スケッチで以下のように
作図しました。


通常は基準点(原点)を用いてスケッチを作図します。
基準点として要素が固定されるからです。

これを原点以外の何もない個所から線を出すと
固定されていないので何かの拍子でとんでもない
変更が勝手にされてしまう場合があるのです。

なので寸法拘束をいじっても、
伸ばしたい部分の線は基準線となるので、
この線は動きません。

どうしても矢印方向しか伸びないのです。

今回は単純な例で説明しているので、
今回の場合 変更がうまくいく例としては

以下のように位置拘束を掛けている状態で

 

上記の30という寸法に加え50の寸法も伸せばいい
ということがわかります。


しかし、逆に言うとパラメトリック設計による
変更でうまくいく場合は、よほどうまく各拘束を
組んでいる場合だとわかります。

 

いいですか?
今回は、あくまで簡単な例で解説をしています。

これがもっと複雑な部品で
周囲の部品に拘束を掛けまくっている状態だと・・

 

 

とある機械設計者

文句言ってねーで
”厚み”で厚さを
嵩増しすればいいじゃん

その通りです。
しかし、それをやると”厚み”という履歴が残ります。


次に何かの設計変更の場合、”厚み”に気づず、
断面をいじってしまう可能性があったり、

”厚み”に気づいて、”厚み”を削除したら
そこに掛かってる面取りも消えてしまい、
それに気づかず出図となる可能性もあります。

この手のヒストリー系CADでは、
スケッチ以外の(面取りやRは除く)ソリッド編集は,
極力行わないほうがいいのです。

 

これを言ったらおしまい
そもそも論

そもそも論ですがスケッチの断面の拘束を
いじらずに”厚み”でかさ増しするのであれば、

それは、履歴等がない
ノンヒストリー系のCAD操作です。

あんなに苦労して拘束していた意味をなしません。

だったら、
ノンヒストリーCADでいいじゃん!!

 

このように、
ヒストリー系CADで設計変更を楽にするためには、
あらかじめどのような設計変更があるのかを
予知をして、あらかじめ そこが原点にならないように
スケッチで拘束を組む必要があります。

 

なお、
管理人が強く推奨するノンヒストリー系CADの場合

上記のような設計変更は”厚み”で厚みを
掛けてあげれば、面取りも一緒についてきて

履歴も残らず
何の問題もなく設計変更が3秒程度で終了します。

 

 

④大規模アセンブリを開くだけで‥

どのCADとは言いませんが、
大規模アセンブリとなると開くだけで10分以上
とか普通に掛かります。

 

どうやら開く際に一つ一つのパーツファイルを開き
拘束を確認しているらしいのです。
そして、動作自体も非常に遅い。

どうやら
我々 機械設計者は、ヒストリー系のCADメーカーから
暇だと思われているようです。

 

パラメトリック設計は、
実際は何の役にも立たないのですが

ヒストリー系
CADメーカー

パラメトリック設計を
提供しているんだから、
それくらい我慢しろ

ということなんですかね。

 

 

⑤ヒストリーCADをおススメできない理由 まとめ

3DCADの導入を御検討している企業様向けに
ヒストリーCADをおススメしない理由の記事を
まとめました。

 

 

⑥まとめ

今回はヒストリー系CADの
不便さとパラメトリックの汎用性のなさの一部を
解説しました。

 

本当はもっと書きたいことがあるのですが
紙面の都合上、管理人が特に不便だと感じた
項目を列挙しました。

 

上記で解説した通り、ヒストリー系CADの3D操作は
自由度がありません。

  • 簡単な作業でも、
    いたずらに難しくしてしまっています。

では その代価である設計変更の楽さは?
というと・・・

  • 人によって拘束の掛け方が違う
  • 大規模アセンブリでは作った本人もわからなくなる
  • 設計変更と拘束によってはパラメトリック不可
  • 拘束がややこしくてエラーが出やすい

といった
設計者のことを1mmも考慮していないCADです。 

 

本記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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