tsurfの機械設計研究室

サーボモーターやエアシリンダの選定計算なども扱っている技術ブログです

スポンサーリンク


MENU

サーボモーターの選定計算(トルク計算)の解説 ベルト駆動編(補足 ベルト駆動の直動慣性モーメント式の理由解説付き)

本ブログの御訪問ありがとうございます。
機械設計歴20年以上のtsurfと言います。

今回は以下に関する記事です。

サーボモーターの選定計算
(トルク計算)の解説 
ベルト駆動編
(補足 ベルト駆動の直動慣性モーメント式の理由解説付き)

 

⇩本記事は以下の方にオススメです⇩

f:id:tsurf:20210605171303p:plain
とある
未経験機械設計者

ベルト駆動のサーボモーターの
選定計算教えてよ

 

⇩本記事を読むと以下が わかります⇩

f:id:tsurf:20210611183707p:plain

管理人TSURF

ベルト駆動時のサーボ選定計算を
以下の点において
わかりやすく説明します

 

なお以下の記事では、ボールネジ機構における
サーボモーターの選定計算記事です 。

まず、この記事でボールネジ機構を理解ていただくと
理解が速いかもしれません。

 

 

①結論 概要基礎 駆動力について

f:id:tsurf:20210703093035p:plain

 

基礎

サーボモーターの選定計算に関わらず、駆動系を使い
ワークを搬送させる場合駆動系の選定に共通して必要なのは 
以下の式です

必要駆動力(N)=外部負荷力(N)+加速力(N)

 

このあたり 詳しく知りたい方は、
以下の記事の御参照をお願いします。

 

外部負荷力

外部負荷力とはプーリー機構によって
実際に直動運動される以下の部品等からくる

  • ワーク
  • ワークを受ける搬送治具 
  • リニアガイドのスライドブロック等 

直動運動される部品の質量合計と
地球の重力による以下の力に拮抗するための力です。

  • 垂直搬送であれば重力
    (今回はベルト駆動のため 垂直搬送はなし)

  • 水平搬送であれば摩擦力

 

以上の力は最低限必要な力であり、
これだけでは動きません

動くか動かないかの状態です。
これから動き出すには、加速力が必要になります。

  

加速力

物体を動かし始める時の力です。

加速力を与えることによって、
初めて物体が動き出します。

その加速度は動作仕様によって違います。
力は加速度と質量に比例します。

 

各必要力をモーター軸の
回転力に当てはめる

必要駆動トルク(N・m)=
外部負荷トルク(N・m) + 加速トルク(N・m)

 

 

②計算式の解説前置き

以下のシンプルな例で解説します。
今回は、ガイドなどは省きます

 

以下の機構の場合

f:id:tsurf:20210912120243p:plain

   図1 ベルト駆動機構

 

ベルト駆動における サーボモーターの選定計算は以下となります

f:id:tsurf:20210912131356p:plain



  内容 単位 特記事項
T モーターの必要トルク N.m  
Fm 直動部による外部負荷力 N

水平なら摩擦力
垂直なら重力

(ベルト駆動なので水平のみ)

プーリーの外径 m 単位換算に注意
A 減速比 無次元  
m 直動部の質量 Kg  
Jp プーリーの
慣性モーメント
Kg.m²

2ヶ以上の

使用であることに注意

Js その他回転部品の
慣性モーメント
Kg.m²

ベアリング

メカロックなど

Ja 減速機の
慣性モーメント
Kg.m² カタログに記載あり
Jb モーター軸の
慣性モーメント
Kg.m² カタログに記載あり
ω" 角加速度 1/sec²  

 

これについて、結論で述べたことを
踏まえつつ解説していきます。

ベルト駆動の場合は、
ボールネジ機構ほど難しい計算式ではありません

 

⇩この部分が外部負荷トルクの計算部になります

f:id:tsurf:20210911171525p:plain


⇩この部分が 加速トルクの計算部になります 

f:id:tsurf:20210912131434p:plain



③外部負荷トルクの計算式の仕組みと計算式解説

概要

以下の部分の計算式の解説をします

f:id:tsurf:20210911171525p:plain

 

図1の例では 直動する部分は以下となります。

f:id:tsurf:20210912112054p:plain


これらの部品は全て直動します。

 

そしてこれらの部品の質量は
水平搬送なので、摩擦力として負荷となります。
直動方向に対して負荷(ブレーキ)となります

 

手順としては以下となります。

外部負荷力を算出

   ⇩

外部負荷力から 
モーターに必要な外部負荷トルクを算出

 

 

手順1 外部負荷力を求める

外部負荷力は、以下となります。

水平搬送であれば 質量 × 重力 × 摩擦係数

 

上述した直動する以下の部品の質量の合計をmとします

  • ワーク
  • ベルトの直動部
  • (ガイドがあれば ガイドのスライド部)

 

水平搬送による摩擦力をFmhとすると
各外部負荷力は以下の式になります。

外部負荷力の式

水平搬送による摩擦力 Fm = µmg

 

m:直動部質量合計  <Kg>

g:重力加速度 9.8 <m/sec²>

µ:摩擦係数     0.2<無次元>

 

補足 摩擦係数

今回はベルトとプーリーとの摩擦であるため、
0.2程度で計算します。

ガイドを使用するのであれば0.1程度です。

 

算出された計算結果を

⇩以下の赤枠の部分にあてはめます

f:id:tsurf:20210911192508p:plain

 

手順1補足 外部摩擦トルク計算式の仕組み

トルクは、下図のように発生推力x半径となります。

f:id:tsurf:20210912130123p:plain


従って 外部摩擦トルクの計算式は 
外部摩擦トルク(N.m)=Fm(N) x D/2(m)
となります

 

手順2 減速比を考慮する

減速機がつけば、
減速される分トルクが大きくなります。

今求めているのはモーター軸にかかるトルクなので 
減速比(無次元)で割ってあげています。

 

⇩以下の部分ですね 

f:id:tsurf:20210911192704p:plain

 

 

④加速トルクの計算式の仕組み

前置き

この章では、慣性モーメントと角加速度より 
加速トルクを求めます。

 

慣性モーメントとは、物体の回転しづらさなのですが
詳しくは、以下の記事を御参照ください。

 

概要

以下の計算式は加速トルクを計算しているのですが
その加速トルク算出を解説します。

加速トルクは以下で求められます。

加速トルク算出

加速トルク(N)

=回転部品慣性モーメント(Kg・m²) × 角加速度(1/sec²)

 

図1の例では 回転する部品は以下となります

f:id:tsurf:20210912112137p:plain



慣性モーメントは全回転部分に関して算出し、
合計するのですが 
減速機のトルクアップによる影響があるかどうかで
以下に別れます

f:id:tsurf:20210912131614p:plain

何故 別れるのか?

それは、求めた慣性モーメントに、減速機による
トルクアップの影響がある場、トルクが小さく済むので 
計算値にその補正をかけるからです。

 

次章から、
慣性モーメントから加速トルクの算出を解説します。

 

 

⑤加速トルクの計算式の解説その1
 減速機以降の慣性モーメント

前解説 減速機の出力軸以降の
回転部品洗い出し 

以下の範囲の回転部品の慣性モーメントを
算出します。

f:id:tsurf:20210912134305p:plain



慣性モーメントは回転しづらさです。
この部分の回転による慣性モーメントは以下となります。

Jc 直動部があることによる回転負荷
Jp プーリー自体の回転させづらさ
Js 深溝玉ベアリングの外輪の回転させづらさ
ベルトの回転部の回転させづらさ
メカロックの回転させづらさ

 

手順1 プーリーが受ける直動慣性モーメントJc

直動部を直動送りする際に
プーリーに発生する負荷である慣性モーメントを
求めます。

 

プーリーによる直動慣性モーメントは
以下の式で求めます。

直動慣性モーメント(Kg.m²)
=直動部の質量(Kg)×(プーリーの直径(m) ÷2π)²

⇩この赤枠の部分ですね

f:id:tsurf:20210912141523p:plain

 

D プーリーの直径 単位(m)
m 直動部の質量
(外部負荷力の算出時に求めた値です)
単位(Kg)

 

 

手順1の補足 プーリ機構の
直動慣性モーメントの誘導式

プーリー駆動の直動慣性モーメントが 
なぜ以下の式になるかの証明をしましょう。

(お急ぎの方は 読み飛ばしても構いません)

直動慣性モーメント(Kg.m²)の計算式

=直動部の質量(Kg)×(プーリーの直径(m) ÷2π)²

 

加速時のトルクのみを求めてみます

プーリー駆動の場合 直動力からトルクT(N.m)を求める式は以下でした

トルクT(N.m)の計算式1

T=F × D/2 ・・・・・・式1

F 直動力 N
D プーリーの直径 m

 

 

ここでF(N)は以下で求められます

直動力F(N)の計算式

F =m × a                       ・・・・式2

m 直動部の質量力 Kg
a 直線(接線)加速度 m/sec²

 

 

式2を式3に代入します

トルクT(N.m)の計算式2

T=ma × (D/2) ・・・・式3

 

 

ここで 円運動における接線加速度以下で求められます

直動(接線)加速度a(m/sec²)の計算式

a=(D/2) × ω”²    ・・・・式4

(円運動する物体の接線加速度の公式より)

D プーリーの直径 m
ω” プーリーの角加速度 m/sec²

 

式3に式4を代入します

トルクT(N.m)の計算式3

T=m × (D/2) × ω”² × (D/2)・・・式5

 

一方で 回転運動に必要な加速力の式として以下があります

トルクT(N.m)の計算式4

T=Iω”² ・・・・・・・・・・・・・・式6

 

式6を式5に代入します

直動慣性モーメントI(Kg.m²)の計算式

Iω”²=m × (D/2) × ω”² × (D/2)

 

よって 以下の公式が導きだされます

ベルト駆動における 直動慣性モーメントI(Kg.m²)の計算式

I=m × (D/2)²

 

手順2 ボールネジ と
その他回転部品の慣性モーメント

プーリーそのものの慣性モーメントと、
その他の回転部品の慣性モーメントを求めます。

⇩この赤枠の部分です。

f:id:tsurf:20210912141846p:plain

 

 

Jp

プーリそのものの慣性モーメント

n個使っている場合xnです

今回の例ではx2にします

単位(Kg・m²)
Js 以下の慣性モーメント合計
●深溝玉ベアリング外輪
●ベルトの回転部
●メカロック
単位(Kg・m²)

慣性モーメントの計算式については以下を御参照ください

注意点として
部品の形状を以下近似形状として計算してください。

プーリー 中空円柱の
慣性モーメント計算式
深溝玉ベアリング
の外輪
ベルトの回転部
ベルトの回転部

 

手順3 減速比を考慮する

今まで計算してきた回転部は、減速機の影響を受けます。
減速比の2乗で割ってあげます。
⇩それが この赤枠の部分です。

f:id:tsurf:20210912143115p:plain

 

 

⑥加速トルクの計算式の解説その2
 サーボモーターから減速機の慣性モーメント

これから計算する部分は、減速機の影響を受けません。
従って、この部分は慣性モーメントを合算するだけです。

⇩この部分ですね

f:id:tsurf:20210828115048p:plain

Ja 減速機の慣性モーメント
(カタログに記載あり)
Jb サーボモーターのローターの慣性モーメント
(カタログに記載あり)

 

 

⑦加速トルクの計算式の解説その3
 慣性モーメントの合算に角加速度をかける

慣性モーメントの合算

今まで求めた 減速機以降の慣性モーメントと
サーボモーター~減速機までの慣性モーメントを合算します。

⇩以下の赤枠の部分ですね。

f:id:tsurf:20210912144154p:plain


角加速度を掛けて 加速トルクの算出

慣性モーメントの合算に 角加速度を掛けます。

⇩以下の赤枠の部分です。

f:id:tsurf:20210912144423p:plain

 

角加速度ω”について

角加速度は、
所定の回転数に到達するための回転加速度のことです。

簡単に解説すると以下になります。

角加速度ω”(1/sec²)の算出

ω”=ω / t a

 

ω:角速度 (rad/sec) 

ta: 加速時間 (sec)

 

角速度はラジアン換算してください。
ラジアンは、角度によってできる円周の長さを
半径で割った比なので無次元です。

角加速度の基礎知識については 
以下の記事を御参照ください。

 

角加速度の求め方については 以下の記事を御参照ください


 

⑧選定計算の後 モーター性能表との照らし合わせ

選定計算を行っても モーター性能表の見方を間違えると
意味がありません。

以下の記事を御参照ください。

 

⑨まとめ

  • 必要トルク=外部負荷トルク+加速トルク
  • 外部負荷トルクは 外部の負荷である重力や
    摩擦力に対抗する最低限のものです。
  • 動きださせるには 重力や摩擦力に加え 
    加速しなくてはいけません。
  • そのために 加速力が必要です。

 

本記事は以上です。
最後までお読み頂きありがとうございます。

本ブログの文章や画像の無断転用を禁止します