tsurfの機械設計研究室

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【機械設計の物理】力の分解(斜面上の物体に掛かる力と動かすための力)

本ブログの御訪問ありがとうございます。
機械設計歴20年以上のtsurfと言います。

 

今回は以下に関する記事です。

【機械設計の物理】力の分解
(斜面上の物体に掛かる力と動かすための力)

 

⇩本記事は機械設計初心者の方で以下の方にオススメです⇩

f:id:tsurf:20210605171303p:plain
とある
未経験機械設計者

機械設計に使える
基礎的な物理を
教えて欲しい

 

⇩本記事を読むと以下が わかります⇩

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管理人TSURF

今回は力の分解その2として
斜面上にある物体に
掛かる力と動かすための力
を解説します

 

 

①力の分解解説モデル

今 以下の図のように、
角度Θ°の斜面上に搬送物があります。

ここで、この駆動機構が搬送物を斜面沿いに
搬送するために必要な力を解説します。

 

 

②結論

駆動機構が必要とする外部負荷力Fk(N)は、
以下となります。
Fk=Ma+(Mg・sinΘ+μMg・cosΘ)

Θ 斜面の角度 (°)もしくは
(radian)
搬送物の質量 (Kg)
搬送させる際の加速度 (m/sec²)
g 重力加速度(9.8) (m/sec²)
μ 摩擦係数 (無次元)

 

このMaの部分に関しては加速力となりますので
以下の記事を参照してください。

 

今回は、外部負荷力をメインとして
Mg・sinΘ+μMg・cosΘの部分

外部負荷力Ft(N)として解説します。

 

 

③搬送物に必要な力(外部負荷力)

概要

斜面によって物体に掛かる力は以下に分解されます。

ここで駆動機構に必要な力は、加速力を除けば
滑り落ちる力に対抗する力Faが必要になりますね。

しかし それだけではありません。
駆動機構が斜面に沿って搬送しようとするときに
斜面と搬送物に摩擦力が生じます。

なので以下の赤字が追加されます。


ここで 分解された力に補助線を追加していきましょう。

 

最終的に搬送に必要な外部負荷力

ここでまとめると搬送に必要な外部負荷力は、

  • 斜面を滑り落ちる力Fa(N)
  • 斜面と搬送物の摩擦力Fc(N)

となります。

 

 

④搬送に必要な外部負荷力Ft(N)の算出

斜面を滑り落ちる力Fa(N)

以下の図より、

青い矢印:斜面を滑る落ちる力Fa(N)は
以下となります。
Fa=Mg・sinθ

Θ 斜面の角度 (°)もしくは
(radian)
搬送物の質量 (Kg)
g 重力加速度(9.8) (m/sec²)

 

搬送物と斜面の摩擦力Fc(N)

摩擦力とは、接地面に垂直に掛かる力に比例して
進行方向に対して妨害する力です。
f:id:tsurf:20210215195707p:plain

摩擦力は以下の式で算出します。
摩擦力(N)
=摩擦係数(無次元) × 接地面に垂直に掛かる力(N)
となります。

上図の場合、接地面に垂直に掛かる力は重力なので
摩擦力(N)
=摩擦係数(無次元) × 重力(N)
となります。

 

なので、今回は以下の図より
接地面(今回は斜面)に垂直に掛かる力は、
赤矢印のFb(N)となります。

Fb=Mg・cosΘなので

黄色い矢印:摩擦力Fc(N)は以下となります。
Fc=µMg・cosθ

Θ 斜面の角度 (°)もしくは
(radian)
搬送物の質量 (Kg)
g 重力加速度(9.8) (m/sec²)
μ 摩擦係数 (無次元)

 

斜面上の搬送物を動かすために
必要な外部負荷力

つまり、以下の図において


駆動機構が必要な外部負負荷力Ft(N)は、
以下となります。
Ft=Mg・sinΘ+μMg・cosΘ

Θ 斜面の角度 (°)もしくは
(radian)
搬送物の質量 (Kg)
g 重力加速度(9.8) (m/sec²)
μ 摩擦係数 (無次元)

 

 

⑤駆動機構が搬送物を斜面に押し上げる力の式の応用

概要

今回の式で御紹介した
斜面の外部負荷力Ft(N)の式ですが
駆動系を考えた場合には当然今回触れなかった加速力も
必要になります。

すると、駆動系が必要な力Fk(N)は以下の式となります。
Fk=Ma+(Mg・sinΘ+μMg・cosΘ)

Θ 斜面の角度 (°)もしくは
(radian)
搬送物の質量 (Kg)
搬送させる際の加速度 (m/sec²)
g 重力加速度(9.8) (m/sec²)
μ 摩擦係数 (無次元)

実は この式は、どのようなケースにも応用できる
汎用性のある式なのです。

 

水平時に必要な駆動力Fkh(N)

このΘに水平時である0°を代入します。

Fkh=Ma+Mg・sin(0°)+μMg・cos(0°)
sin(0°)=0 cos(0°)=1 より

水平時の駆動系の搬送力Fkh (N)
は以下となります。

Fkh=Ma+μMg

搬送物の質量 (Kg)
搬送させる際の加速度 (m/sec²)
g 重力加速度(9.8) (m/sec²)
μ 摩擦係数 (無次元)

 

垂直時に必要な駆動力Fkv(N)

このΘに垂直時である90°を代入します。

Fkv=Ma+Mg・sin(90°)+μMg・cos(90°)
sin(90°)=1 cos(90°)=0 より

垂直時の駆動系の搬送力Fkv(N)
は以下となります。

Fkv=Ma+Mg

搬送物の質量 (Kg)
搬送させる際の加速度 (m/sec²)
g 重力加速度(9.8) (m/sec²)

 

 

⑥補足(読みとばしOK)

上図において なぜ力の分解ベクトルの角度が
斜面角度と同じになるのかを解説します。

 

まず、
以下のベクトルで
三角を分解します。

すると・・・

 

右図より
指定の線が平行
となります。

なので・・・

 

右図より
角度がΘ”が判明
となります。

なので・・・

 
直角三角形の
内角より
Θが証明されます。

 
あとは平行線の
同位角と対頂角
により
右図が証明されます。

 

物体が単に斜面を
滑り落ちる場合

物体が単に斜面を滑り落ちる場合とは
以下の状況を指します。

この時に注意したいのが摩擦力の向きです。

先ほどは、駆動系の搬送方向に対して
逆向きの摩擦力が発生しました。

しかし、摩擦力とは あくまで
進行方向の逆に発生する阻害する力
です。

今回のように滑る落ちる時に発生する
摩擦力は以下となります。

従って、
搬送物が斜面を自重で滑り落ちる力Ff(N)は
以下となります。

Ff=Mg・sin(Θ) - μMg・cos(Θ)

Θ 斜面の角度 (°)もしくは
(radian)
搬送物の質量 (Kg)
g 重力加速度(9.8) (m/sec²)
μ 摩擦係数 (無次元)

 

 

⑦まとめ

汎用性のある式は、駆動機構が必要とする出力Fk(N)
Fk=Ma+Mg・sin(Θ)+μMg・cos(Θ)
この式は、水平時、垂直時 含めて、
全ての状態に対応しています。

 

本記事は以上です。
本記事を最後までお読み頂きありがとうございます。

 

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