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機械設計歴20年以上のtsurfと言います
今回は以下に関する記事です
真空チャックとそのメカニズム(真空チャック力計算など)
⇩本記事は機械設計初心者の方で以下の方にオススメです⇩
真空チャックってだいたいわかるけど
注意点とか エアのシステムとか教えて欲しい
⇩本記事を読むと以下が わかります⇩
以下を なるべく
わかりやすく説明します
●真空チャックの原理
●真空チャックの注意点
●真空チャックに必要なエアシステム
- ①結論
- ②真空チャックの構造
- ③真空チャックのメカニズムとチャック力計算
- ④真空チャックに必要な真空機器
- ⑤真空チャックのエアシステム(真空ポンプ)
- ⑥真空チャックのエアシステム(真空発生器)
- ⑦真空ポンプと真空発生器の使い分け
- ⑧真空チャックの実際の設計、計算例
- ⑨まとめ
①結論
真空チャックとは 真空によってワークを掴むことです
掴んで 搬送などをしたりします
真空チャックは 以下の特徴があります
●軽量物に対して有効 重量物は不可
●チャック自体に機械的構造がないので構造が簡単で 安価
●回転昇降機構と組み合わせ安い
●真空発生源に 真空発生器や真空ポンプが必要となる
②真空チャックの構造
以下 例を提示します
後述しますが チューブの先には以下を接続します
●真空発生源(真空発生器 OR 真空ポンプ)
●真空圧計
●真空用 電磁弁
③真空チャックのメカニズムとチャック力計算
真空チャックのメカニズム
真空チャック機構の断面を以下とします
真空パッド部の ワークが乗る部分の開口ΦDaの部分が
真空となる範囲です
図を見ていただくと わかりますが
真空チャックとは 真空で引っ張るというより
ΦDa部を負圧にすることにより
その範囲部に圧力差が生じ 大気圧に押されるのです
それ以外の部分は 大気圧が均等に掛かるので±0となります
真空チャック力の計算式
真空チャック圧の式は 以下となります
真空チャック力 VF(N) | |||
VF =π × (ΦD/2)² × Pa |
(N) |
||
ΦD | : | 真空範囲直径 | (㎜) |
Pa | : | 真空圧 | (KPa=0.001N/mm²) |
以下 例を出します
真空範囲直径 | ΦD | : | Φ8 | (㎜) |
真空圧 | Pa | : | 30 | (KPa=0.001N/mm²) |
上記条件の場合VFは以下となります | ||||
π × (8/2)² × 30×0.001 = 1.5 | (N) |
注意点
上記式からわかる通り
真空圧は 理論上-0.1MPaが最大です
しかし 真空発生源には 発生真空圧に上限があります
したがって 持ち上げるワークには限界があり
真空チャック力を強めようとするならば 以下の方法があります
- 真空圧の範囲を広げる
ΦDaの部分をなるべく大きくする - 真空圧を上げる
真空発生源の能力が上限値ですが、
その範囲内での調整です
④真空チャックに必要な真空機器
真空チャックにおいて、真空を発生させる機器が必要です。
その真空を発生させる機器は、以下の2つあります。
- 真空ポンプ
- 真空発生器
それぞれ どのような特徴があるのかは、
⇩以下の記事を御参照ください。⇩
⑤真空チャックのエアシステム(真空ポンプ)
概要
真空チャックに必要なエアシステムの例を提示します
以下は 真空発生源に真空ポンプを使用した例となります
基本的には
上記のようにシンプルであるがゆえに 安価なシステムです
真空用2方向弁
真空を伝えるか伝えないかの2方向弁となります
- 真空発生⇒弁開
- 真空解除⇒弁閉
⇩2方向弁については 以下を御参照ください⇩
真空破壊用2方向弁
真空用2方向弁を閉じて 真空を遮断しても
ワークから真空用2方向弁までのラインに真空が残る場合があり
ワークの吸着が 離れない場合があります
その時に
この弁を開けると ワークから真空用2方向弁までのラインの真空が破壊されます
それにより 吸着が解除され ワークがアンチャックされます
真空圧計
これは 結構重要で チャック力を管理するためにも必要です
先述のようにチャック力は真空圧から求められます
後述する真空レギュレーターと組合わせて 調整 管理します
真空レギュレーター
真空圧を調整できるエア機器です
つまみを回すと 真空圧を調整できます
真空圧計を見ながら調整します
⑥真空チャックのエアシステム(真空発生器)
概要
真空チャックに必要なエアシステムの例を提示します
以下は 真空発生源に真空発生器を使用した例となります
基本的には
上記のようにシンプルであるがゆえに 安価なシステムです
以下に関しては 真空ポンプの場合と同じです
- 真空用2方向弁
- 真空破壊用2方向弁
- 真空圧計
真空発生器へのエア供給用2方向弁
真空発生器に、真空を発生させるための
エア供給用2方向弁となります。
この場合、真空を発生させるためには
真空発生器にエアを供給させるので、以下となります。
- 真空発生⇒弁開
- 真空解除⇒弁閉
エア流量調整用手動弁
これは 重要です。
真空発生器へのエア供給量を調整することにより
結果的に真空圧を調整できます。
真空圧計を見ながら調整します。
実際には以下を用いることが多いです。
- スピードコントローラー(チェック弁なし)
- レギュレーター
供給圧の強弱でもエア流量の変更が可能だからです。
真空発生器による
エアシステム注意点
真空発生器を用いた真空圧調整方法は以下です。
〇⇒真空発生器に供給するエア量での調整
✖⇒真空レギュレーターを設置して真空圧を直接調整
理由ですが
- 真空発生に供給するエア量での調整の場合
真空圧を弱めたければ エアの供給量を減らせばいいのです。
つまり エアの消費量を節約できます - 真空レギュレーターで真空圧を直接調整の場合
真空圧を弱めるために 真空レギュレーターで調整しても
真空発生器の消費エアは多いままです。
⑦真空ポンプと真空発生器の使い分け
基本的には以下となります。
- 真空チャック⇒真空発生器
短時間かつ真空範囲も狭い限定的な真空発生なので、
エア消費量も少なく抑えられるからです。
従ってシステム自体が安いというメリットを
最大限に活かすことができます。 - 真空チャンバー⇒真空ポンプ
真空での処理が必要なので、
当然駆動系も真空チャンバー内となります。
したがって、ある程度大きな容積を長時間
真空にしなくてはいけません。
これを、エジェクターでやろうとすると、かなりの
エアを消費するので、システム全体のエア圧降下で、
システムダウンしかねません。
真空ポンプにしたほうが無難です。
⑧真空チャックの実際の設計、計算例
実際の設計例や真空チャック力の計算例を解説します。
⇩以下の記事を御参照ください⇩
⑨まとめ
- 真空チャックは 機械的構造がないため安価にできる
- また 回転昇降とも組み合わせやすい
- ただし 軽量物のみに限る 真空圧には限界があるから
- 真空チャックによるチャック力は 計算で簡単に求めることができる
- チャック力の計算式は 真空圧 × 真空発生面積
- 真空圧計と組み合わせて チャック力の管理ができる
- 真空チャック真空発生源に真空発生を使用する場合は注意
- 工夫次第で真空発生用のエアを省エネできる
本記事は以上です
最後までお読み頂きありがとうございます