tsurfの機械設計研究室

サーボモーターやエアシリンダの選定計算なども扱っている技術ブログです

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機械設計で使う流体を流すポンプの基本

本ブログの御訪問ありがとうございます。
機械設計歴20年以上のT.surfと言います。

 

今回は以下に関する記事です。

機械設計で使う
流体を流すポンプの基本

 

  

⇩本記事は機械設計初心者の方で以下の方にオススメです⇩

f:id:tsurf:20210605171303p:plain
とある
初心者機械設計者

ポンプって
凄い種類があるし、
どうやって選ぶの?

 

⇩本記事を読むと以下が わかります⇩

管理人T.surf

ポンプの種類と
使い分けや選定を
わかりやすく
説明します

 

 

①結論

ポンプの種類

詳しくは後述しますが、
大きく分けて主に以下があります。

 

 

非容積式ポンプ

例:マグネットポンプ

  • 電気のみで稼働
  • 安価
  • 自吸能力無し
  • 脈動が少ない

f:id:tsurf:20220226173806p:plain

 

容積式ポンプ

例:ベローズポンプ

  • エアを消費する
  • エア回路が必要
  • 高額
  • 自吸能力有り
  • 脈動有り

f:id:tsurf:20220226180911p:plain

 

ポンプ性能と選定

詳しくは後述しますが、主に以下を見ます。

  • 吐出圧
  • 自吸能力
  • 流量
  • 脈動の有無

 

 

②ポンプの性能から見る選定

ポンプの種類を解説する上で、
ポンプの性能を理解しなくてはいけません。

選定する上でだいたい以下を見て吟味します。

吐出圧
(揚程能力)

流体を吐出する際の圧力です。
この数値が大きいほど、
高所に流体を運べます。単位は(KPa)

ポンプによっては直接揚程能力を
記載しているものもあり、
その場合の単位はmです。

自吸能力

流体をポンプ内へ呼び込む能力で、
負圧で表現されます。単位は(KPa)

⇩この負圧が大きい⇩
大きい負圧でポンプ内に流体を導けます。
つまり、タンクより
高い位置にポンプを設置可能となります。
(ポンプの設置自由度が高い)

⇩この負圧が小さい⇩
小さい負圧しか発生できません。
(もしくは負圧を発生不可)
なので、自力で液を呼び込めません。
タンクより下に設置することに
より液の自由落下でしか
ポンプ内に流体を呼び込めません。
(ポンプ設置の自由度がない)

流量

搬送できる液の流量です。
この値が一番重要となります。
単位は(L/min)

脈動の有無

脈動とは 
流体の移送が間欠的になされる
ことです。

ベローズポンプなどは、
大きな脈動があります。

 

 

③非容積式ポンプ(例:マグネットポンプ)

特徴

非容積式ポンプの例として、
マグネットポンプで解説します。

構造としては、羽車をモーターで回して
その勢いで流体を押し上げます。

f:id:tsurf:20220227101241p:plain

特にマグネットポンプは
上図の流体室をモーター駆動部が、
マグネットにより非接触回転させています。

 

メリット

  • 構造が単純で安価
  • インペラの高速回転のため連続性があり大流量
    (脈動が小さい)
  • 電気のみで稼働できる
  • 脈動が少ない

 

デメリット

●自吸能力がない=設置に制限がある

構造上、羽根車がただ回転しているだけです。
回転構造上スキマがあるので
強力な負圧は発生しません。

従って自吸能力がありません。

 

ポンプをタンクより高い位置に設置してしまうと
ポンプ内に液体を呼び込めませんのでNGです。

タンクより低い位置に設置し、
流体の自由落下により
ポンプに流体を供給しなくてはいけません。

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●空運転禁止

モーターを使うので、温度が上昇します。
このポンプは内部の液体を使ってポンプを
冷やして連続運転が可能となります。

従って、
液がない状態での運転はNGとなります。

 

●吐出圧はあまり高くない

これも構造上 羽根車の回転しているだけの性質上
構造上スキマがあるため

吐出圧もあまり高くありません。
従って、あまり高所への押し上げ能力はありません。

 

●摺動部が接液(クルーン度が高くない)

機械摺動である軸受け部による 
粉塵が流体に混ざる可能性があります。

従って、流体の清浄度が問題の場合は 
フィルターが必要です。

 

●循環回路だとヒーターと化してしまう

電気を使いモーターで羽根車を回しているため
熱が発生します。

循環回路に使用すると液温が上昇していきます。

 

極端に言えば 
モーターに使われているポンプの出力が
0.4Kwだとすると

0.4Kwのヒーターを抱えている
のと等価
となります

 

液温管理が必要な場合は注意が必要で 
冷却回路を追加しなくてはならない場合が
あります。

 

●高腐食流体には不向き

羽根車の回転に軸受けがある都合上
耐薬品性には限界があります。

使える薬品と濃度は確認の必要があります

 

 

④容積式ポンプ(例:ベローズポンプ)

特徴

ベローズとは樹脂製の蛇腹であり、
ベローズをエアシリンダーによって、
駆動させることにより吸引と吐出を行います。

動作は以下となります。

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チャッキ弁をうまく使っていますね。

ですが、チャッキ弁の仕組みがわからないと 
この構造はわかりづらいので
補足で解説するチャッキ弁の解説を御参照ください。

 

補足 チャッキ弁について

チャッキ弁の構造を解説します。

チャッキ弁は、1方向にのみ流体を通す弁であり 
逆流をさせません。

 

この性質があるからこそ
先述のとおりベローズポンプが吸引と吐出を
行うことができるのです。

 

まず 以下の図のように

 f:id:tsurf:20200812222314p:plain

  • IN側の流体とOUT側の流体圧が同じ
  • OUT側の流体圧が高い

上記の場合は、
スプリングによりシール用の球体部品が、
配管に押し付けられます。

この時は、IN側からOUT側へ流体は通りません。

 

しかし 以下のように

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IN側の流体の圧力が高い時のみ 
スプリングがOUT側へ追いやられ
IN側→OUT側と流体が通ります。

 

特徴

ベローズポンプは、

  • ベローズ膨張時に強力な負圧
  • ベローズ圧縮時に強力な吐出圧

を発生させることが可能となります。

 

強力な負圧は、強大な自吸能力
強力な吐出圧は、液移送搬送力
となっています。

 

つまり、ポンプ設置の自由度が高い反面
ベローズの往復動作によって 
液の吐出と一瞬の停止を繰り返すことにより、
脈動が生じます。

 

連続吐出はできませんが 
パルスダンパーなどを使うことにより
脈動を軽減できます。

 

メリット

●設置の自由度が高い

設置の自由度が高い理由は
ベローズポンプには大きな自吸能力と吐出圧が
あるからです。

このベローズの膨張動作の時に、
この空間は強力な負圧が発生します。

負圧が発生するということは、
液体を引っ張ることができます。

発生負圧に制限はありますが 
タンクより上部への設置も可能です。

自吸能力は、カタログに記載があります。

 

●腐食薬液にも強い

ベローズや内部のチャッキ弁の材質次第では、
高腐食薬液の搬送にも使えます。

耐高腐食仕様のものは、
以下のような対策をとっています。

ベローズ フッ素樹脂
チャッキ弁
の球体
フッ素樹脂
チャッキ弁の
スプリング
PFA(フッ素樹脂)被覆

 

●温度上昇がほぼない

ベローズポンプはエアシリンダ駆動であるため
駆動自体に電気は使っていません。

ですので、液温の上昇はほぼありません。

温度管理にシビアなプロセスに向いています。

 

デメリット

●トータルコストが高い

当然 ベローズポンプ自体も高額なのですが 

  • 後述するベローズを
    駆動させるためのエアシステム
  • 後述する脈動を抑えようとすると、
    パルスダンパーが必要になったり
  • 後述する流量を多くしようと思うと 
    急速排気弁が必要になったり

と、上記のようにトータルコスト自体は
高くなります。

 

●大流量が出しづらい

エアシリンダーの駆動による往復運動のため、
当然大流量は出づらいです

このため、大流量を確保しようと思ったら 
エアシリンダーの動作を高速にする必要があります。

 

その場合 
ポンプの動作エア回路に、急速排気弁を追加する
などの工夫が必要となります。

 

●ベローズポンプを動作させるエア回路が必要

ベローズポンプのエアシリンダを
駆動させるための電磁弁はもちろんですが、

場合によっては急速排気弁なども必要となります。

 

●脈動がある

当然ベローズ構造なので、脈動があります。

脈動があっても問題ない装置であれば
対策は必要ありません。

ですが、
脈動が問題の場合は、脈動軽減のために
パルスダンパーをポンプの後に設置しなくては
いけません。

 

 

⑤まとめ

装置においてポンプが必要となる理由は
その装置が流体を扱う場合です。

槽やタンクを設置する際にポンプも必要となります。

容積ポンプ 非容積ポンプのそれぞれの特徴を
理解して、その装置に適したポンプを選定しましょう。

 

 

本記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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