本ブログの御訪問ありがとうございます。
機械設計歴20年以上のT.surfと言います。
今回は以下に関する記事です。
機械設計で使う
流体を流すポンプの基本
⇩本記事は機械設計初心者の方で以下の方にオススメです⇩
ポンプって
凄い種類があるし、
どうやって選ぶの?
⇩本記事を読むと以下が わかります⇩
ポンプの種類と
使い分けや選定を
わかりやすく
説明します
①結論
ポンプの種類
詳しくは後述しますが、
大きく分けて主に以下があります。
非容積式ポンプ 例:マグネットポンプ
|
|
容積式ポンプ 例:ベローズポンプ
|
|
ポンプ性能と選定
詳しくは後述しますが、主に以下を見ます。
- 吐出圧
- 自吸能力
- 流量
- 脈動の有無
②ポンプの性能から見る選定
ポンプの種類を解説する上で、
ポンプの性能を理解しなくてはいけません。
選定する上でだいたい以下を見て吟味します。
吐出圧 (揚程能力) |
流体を吐出する際の圧力です。 ポンプによっては直接揚程能力を |
---|---|
自吸能力 |
流体をポンプ内へ呼び込む能力で、 ⇩この負圧が大きい⇩ ⇩この負圧が小さい⇩ |
流量 |
搬送できる液の流量です。 |
脈動の有無 |
脈動とは ベローズポンプなどは、 |
③非容積式ポンプ(例:マグネットポンプ)
特徴
非容積式ポンプの例として、
マグネットポンプで解説します。
構造としては、羽車をモーターで回して
その勢いで流体を押し上げます。
特にマグネットポンプは
上図の流体室をモーター駆動部が、
マグネットにより非接触回転させています。
メリット
- 構造が単純で安価
- インペラの高速回転のため連続性があり大流量
(脈動が小さい) - 電気のみで稼働できる
- 脈動が少ない
デメリット
●自吸能力がない=設置に制限がある
構造上、羽根車がただ回転しているだけです。
回転構造上スキマがあるので
強力な負圧は発生しません。
従って自吸能力がありません。
ポンプをタンクより高い位置に設置してしまうと
ポンプ内に液体を呼び込めませんのでNGです。
タンクより低い位置に設置し、
流体の自由落下により
ポンプに流体を供給しなくてはいけません。
●空運転禁止
モーターを使うので、温度が上昇します。
このポンプは内部の液体を使ってポンプを
冷やして連続運転が可能となります。
従って、
液がない状態での運転はNGとなります。
●吐出圧はあまり高くない
これも構造上 羽根車の回転しているだけの性質上
構造上スキマがあるため
吐出圧もあまり高くありません。
従って、あまり高所への押し上げ能力はありません。
●摺動部が接液(クルーン度が高くない)
機械摺動である軸受け部による
粉塵が流体に混ざる可能性があります。
従って、流体の清浄度が問題の場合は
フィルターが必要です。
●循環回路だとヒーターと化してしまう
電気を使いモーターで羽根車を回しているため
熱が発生します。
循環回路に使用すると液温が上昇していきます。
極端に言えば
モーターに使われているポンプの出力が
0.4Kwだとすると
0.4Kwのヒーターを抱えている
のと等価となります
液温管理が必要な場合は注意が必要で
冷却回路を追加しなくてはならない場合が
あります。
●高腐食流体には不向き
羽根車の回転に軸受けがある都合上
耐薬品性には限界があります。
使える薬品と濃度は確認の必要があります
④容積式ポンプ(例:ベローズポンプ)
特徴
ベローズとは樹脂製の蛇腹であり、
ベローズをエアシリンダーによって、
駆動させることにより吸引と吐出を行います。
動作は以下となります。
チャッキ弁をうまく使っていますね。
ですが、チャッキ弁の仕組みがわからないと
この構造はわかりづらいので
補足で解説するチャッキ弁の解説を御参照ください。
補足 チャッキ弁について
チャッキ弁の構造を解説します。
チャッキ弁は、1方向にのみ流体を通す弁であり
逆流をさせません。
この性質があるからこそ
先述のとおりベローズポンプが吸引と吐出を
行うことができるのです。
まず 以下の図のように
- IN側の流体とOUT側の流体圧が同じ
- OUT側の流体圧が高い
上記の場合は、
スプリングによりシール用の球体部品が、
配管に押し付けられます。
この時は、IN側からOUT側へ流体は通りません。
しかし 以下のように
IN側の流体の圧力が高い時のみ
スプリングがOUT側へ追いやられ
IN側→OUT側と流体が通ります。
特徴
ベローズポンプは、
- ベローズ膨張時に強力な負圧
- ベローズ圧縮時に強力な吐出圧
を発生させることが可能となります。
強力な負圧は、強大な自吸能力
強力な吐出圧は、液移送搬送力
となっています。
つまり、ポンプ設置の自由度が高い反面
ベローズの往復動作によって
液の吐出と一瞬の停止を繰り返すことにより、
脈動が生じます。
連続吐出はできませんが
パルスダンパーなどを使うことにより
脈動を軽減できます。
メリット
●設置の自由度が高い
設置の自由度が高い理由は
ベローズポンプには大きな自吸能力と吐出圧が
あるからです。
このベローズの膨張動作の時に、
この空間は強力な負圧が発生します。
負圧が発生するということは、
液体を引っ張ることができます。
発生負圧に制限はありますが
タンクより上部への設置も可能です。
自吸能力は、カタログに記載があります。
●腐食薬液にも強い
ベローズや内部のチャッキ弁の材質次第では、
高腐食薬液の搬送にも使えます。
耐高腐食仕様のものは、
以下のような対策をとっています。
ベローズ | ➡ | フッ素樹脂 |
---|---|---|
チャッキ弁 の球体 |
➡ | フッ素樹脂 |
チャッキ弁の スプリング |
➡ | PFA(フッ素樹脂)被覆 |
●温度上昇がほぼない
ベローズポンプはエアシリンダ駆動であるため
駆動自体に電気は使っていません。
ですので、液温の上昇はほぼありません。
温度管理にシビアなプロセスに向いています。
デメリット
●トータルコストが高い
当然 ベローズポンプ自体も高額なのですが
- 後述するベローズを
駆動させるためのエアシステム - 後述する脈動を抑えようとすると、
パルスダンパーが必要になったり - 後述する流量を多くしようと思うと
急速排気弁が必要になったり
と、上記のようにトータルコスト自体は
高くなります。
●大流量が出しづらい
エアシリンダーの駆動による往復運動のため、
当然大流量は出づらいです
このため、大流量を確保しようと思ったら
エアシリンダーの動作を高速にする必要があります。
その場合
ポンプの動作エア回路に、急速排気弁を追加する
などの工夫が必要となります。
●ベローズポンプを動作させるエア回路が必要
ベローズポンプのエアシリンダを
駆動させるための電磁弁はもちろんですが、
場合によっては急速排気弁なども必要となります。
●脈動がある
当然ベローズ構造なので、脈動があります。
脈動があっても問題ない装置であれば
対策は必要ありません。
ですが、
脈動が問題の場合は、脈動軽減のために
パルスダンパーをポンプの後に設置しなくては
いけません。
⑤まとめ
装置においてポンプが必要となる理由は
その装置が流体を扱う場合です。
槽やタンクを設置する際にポンプも必要となります。
容積ポンプ 非容積ポンプのそれぞれの特徴を
理解して、その装置に適したポンプを選定しましょう。
本記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございます。