本ブログの御訪問ありがとうございます。
機械設計歴20年以上のtsurfと言います。
今回は以下に関する記事です
極論に注意
(3DCADはできてあたりまえなのか? 2DCADは消えるのか?)
製品設計と機械設計の特徴から考察する
本記事は機械設計者の方にオススメです
3DCADから見た
製品設計と機械設計の
違いと特長を説明し、
3DCADや2DCADの必要性を
解説します。
- ①本記事で言いたいこと
- ②機械設計と製品設計の違いと、3DCAD使用目的
- ③3DCADで設計するのが当たり前? 3DCADでないと、設計ができない?
- ④2DCADと2DCADのみ使っている設計者は、そのうち消えるのか?
- ⑤まとめ
①本記事で言いたいこと
設計における3DCADの必要性と、
2DCADの行く末を語る上で、
まず はっきりさせておきたいことが、あります。
それは 同じ設計とは言っても
製品設計と機械設計があるということです。
これらを、混同して考えている方が、非常に多いです。
まず これらを知っていただいた上で
3DCADは、できて当たり前とは言い難い上
2DCADと、2DCADのみを使う設計者が、
今後消えるというのは考えづらい
という事を理解してほしいです。
なお、私は現在では機械設計歴15年ほどですが
それ以前は、自動車部品の製品設計を、約5年ほど経験していた
ことがあります。
また、本記事で
製品設計の設計者と、機械設計の設計者が
お互いのことを、理解できる架け橋になってくれれば幸いです。
②機械設計と製品設計の違いと、3DCAD使用目的
結論
製品設計は、お客様から、3Dデーターを承認図として
提出を要求されることが多いので、3DCADがないと、
仕事が取れないことが多いです。
つまり、
製品設計に関しては、
3DCADが必須であるから、3DCADを使用している場合が多いです。
しかし、
機械設計に関しては、製作仕様図を3Dで提出を要求されるケースは
多くありません。
つまり、
機械設計に関しては、
3DCADが必須ではない以上、設計効率化 後工程の効率化など
別の目的で、使用している場合が多いです。
製品設計と3DCAD
製品設計とは、自動車や家電などの量産部品を設計します。
製品設計の業界では以下の特徴があります。
- 材質は樹脂と薄い金属板がメイン
- 樹脂は射出成形型 板金はプレス型にて量産設備での大量生産
- デザイン面は自由曲面があるので 3DCADでなくては
設計が難しい - 複雑な形状が可能な反面 形状に対して、
金型が成り立つ形状でなくては、ならないなどの制約がある。 - 金型を製作にするにあたり、自由曲面がある関係上
自由曲面を刃物の軌跡データーに変換できるNC加工となる。 - 出図に関してメーカー承認が必要であり、お客様に3Dデーターを
承認図として提出しなくてはならない。
ここで重要なポイントは
『お客様に3Dデーターを承認図として提出しなくてはならない』
という点です。
なぜ自動者や家電などのメーカーは承認図を、
3Dで要求してくるのでしょうか?
自動車業界を例に挙げますと、メーカーで安全性の解析や各検証などに
使用します。
つまり、製品設計に関しては、
3DCADでなくては仕事が貰えないことが多いです。
機械設計と3DCAD
機械設計には様々な分野があります。
機械設計とはについて
ここでは、量産部品の生産設備を例に解説します。
量産部品(製品設計で設計される)に対して
処理や組立、検査などを自動で行う設備などを設計します。
機械設計の業界の特徴は、以下となります。
- モーターやエアシリンダーを使った駆動がメイン
- 当然、自由曲面はない
- 材質は様々な板厚の金属を切削により製作
- 部品の製作は、マシニングやNC加工などの削りだしや溶接加工の
一品一様品となる。(量産部品ではない) - 大量生産ではないので、1つ1つの部品が高額だが
大量生産ではないため、問題はなく
制作に関して、金型による生産ほどの制約はない。 - お客様への製作仕様図といったところで、
装置の外形だけわかればよく、2D図で構わない場合が多い
お客様にとって、投入した部品が、目的の状態で出てくればよく
内部構造がどうだとかを保証するのは設備メーカーであるため
3Dで製作仕様図を提出する必要性が薄いです。
3Dで設計したとしても、外形図のみの2Dを欲しがる場合があります。
下手したら四角図形に寸法が入った程度です
細かい仕様については、製作仕様書のほうで解説をします。
つまり、機械設計においては
必ずしも3DCADを必要としないことが多いです。
では、機械設計で3DCADを導入する場合の目的は?
機械設計で3DCADを導入している会社は何を
目的としているのでしょうか?
主に以下が挙げられます。
- 設計の効率化
- 生産の効率化
(加工の完全NC化や 検査の3D測定化などにより) - 組立の効率化
それぞれの会社で目的や運用が違うので、これ以上の解説は控えます。
しかし、機械設計の業界、扱う装置によっては、
機械設計においても3Dを使う必要性もない場合もあることから、
3Dを導入する場合のメリットとデメリットを検討し
- 3DCADで設計を進めていくのか?
- 2DCADで設計を進めていくのか?
それぞれの会社が決めていく問題となります。
そもそも、お客様が3Dデーターを求めない以上
選択肢の中に、『永続的な2DCADの使用』ということも、
別におかしなことではないし、十分ありえることだ と思います。
③3DCADで設計するのが当たり前?
3DCADでないと、設計ができない?
結論
結論としては、
少なくとも全ての設計業界で、共通の常識ではないです。
確かに製品設計は、3DCADがないと、
設計難易度が跳ね上がるのは認めます。
しかし、
機械設計に限っては、その限りではありません。
製品設計の場合
自由曲面がある以上 |
自由曲面のある |
自由曲面を2Dで表現するのは非常に難しく、
仮に2Dで表現できたとしても、それをもとに金型に対し
自由曲面を加工するのは恐ろしく大変です。
それであれば、設計自体を3Dで行えば設計作業の難易度も下がり、
3Dから直接 金型切削用のNCプログラムを作成することにより、
加工難易度も下がります。
機械設計の場合
搬送機構など駆動系が |
|
ただし、3DCADで行ったほうが圧倒的に楽ではあります。
また、先述のとおり、後工程的にもメリットがある場合もあります。
④2DCADと2DCADのみ使っている設計者は、
そのうち消えるのか?
『2DCADのみ使っている
設計者は消える』
と言い切れる根拠が不明
まず、これを語るには
製品設計と機械設計の違いを理解しておくことが大前提です。
製品設計は、3DCADが必須のケースが多いということで
問題は機械設計における2DCADについてです。
確かに3DCADは、機械設計においても、優れたツールであり
設計業務自体を高効率化してくれるだけでなく、
3Dソリッドであることから、以下のことが可能となります。
- 重量計算、慣性モーメントの算出、重心を短時間算出
複数部品であるがゆえに、手計算だとかなりの時間がかかります。 - 強度解析や動作のシミュレーション
- 環境さえ整えば、加工、検査、組立への展開
だからと言って 上記の理由が、そのまま
『2DCADと2DCADのみを使う設計者 が消える理由になる』
とは、思えないのです。
なぜならば、先述したように、2つのポイントがありからです。
- お客様が、製作仕様図を3Dで欲しがるケースが少ない。
- 機械設計において 業界や扱う装置によっては、
必ずしも、上述の3DCADのメリットを導入する必要性も
ない場合もある
仮に将来的に消えると仮定したとしても
こういう話は、個人の想像の域を出ないので、
ナンセンスなところはありますが、あえて、私の想像を言います。
仮に将来的に消えると仮定したとしても、少なくとも直近20年以内で
全ての製造業、それに関わる全ての企業で、
2Dがなくなる程のパラダイムシフトが起こる世界線が来るとは思えない。
その間に 次世代の方達により、シフトが完了するでしょう。
そもそもですが、
機械設計業界においても 設計レベルでは3D化が達成が出来ても、
後工程の3D対応で問題点があり、
では 『2D図を全て廃止できるか?』
と言われると、解決すべき課題はたくさんあります。
現状では設計は3Dで行っても、出図は2Dの場合が多いです。
⑤まとめ
- 設計といっても、製品設計と機械設計がある
- 製品設計は、自動車や家電などの量産品の設計
- 機械設計は、様々あるが、主に量産部品の組立自動機などの
設備機械の設計 - 製品設計は、お客様が3D承認図を要求することから3DCADが必須
- 機械設計は、設備の設計なので、お客様が必ずしも製作仕様図を3Dで
要求するとは限らない - 機械設計の特性上、かならずしも3DCADで設計するのが
当たり前というわけではない。 - 2DCADと2DCADのみを使う設計者が今後消えるとは考えづらい
本記事は以上です。
最後までお読み頂きありがとうございます。