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機械設計歴20年以上T.surfと言います。
今回は以下に関する記事です。
エレシリンダはエアシリンダの
上位互換なのか?
実は置き換えできないケースもある
⇩本記事は以下の方にオススメです⇩
IAIのエレシリンダは
既存のエアシリンダへ
置き換え可能だと
聞いたことがあるよ
⇩本記事を読むと以下が わかります⇩
確かに電気的に
置き換えは可能ですが
機械的に置き換えできない
ケースもあります。
①エレシリンダーはエアシリンダの上位互換ではない
IAIの製品でエレシリンダーというものがあります。
エアシリンダからの置き換えということで以下の特徴があります。
- 基本的に2点間搬送
- 中間停止も可能
- 電磁弁へ送る信号をエレシリンダに
直接送れば動作可能
という一見新規の装置や既存装置に設置してあるエアシリンダーを
エレシリンダに置き換え可能かと思われますが
実は置き換えれないケースも存在します。
中間停止、防爆、重量、押し付けタクト...
現場でぶつかる“置き換えできない理由”を5つの視点から徹底検証
します。
②中間停止の仕様が違う
エレシリンダもエアシリンダと同じで中間停止ができますが
中間停止の仕様が結構違いすぎます。
ここでエアシリンダの中間停止は
3位置電磁弁を両ポート通電OFFにさえすれば
いつでも止まることができます。
⇩詳しくは以下の記事にて⇩
つまり精度さえ問わなければ多点停止が可能です。
当然停止精度はありませんが
インターロックで回避するだけなら
停止精度も問わないので充分です。
一方エレシリンダの中間停止は
精度ある第3のポジション移動というものです。
エレシリンダは前進、後退信号線に同時通電
(エアシリンダの3位置電磁弁とは逆)
により第3の精度のある位置決めポイントに移動をします。
その場での停止ではないことに留意すべきです。
つまり、エアシリンダで多点停止をしている装置では
エアシリンダからエレシリンダに置き換えは不可能です。
③駆動源の違い
エアシリンダーの駆動源はエアです。
電気レスで防爆環境に使えますがエレシリンダーは
電気制御が必要なため防爆環境では使用できません。
⇩詳しくは以下の記事にて⇩
エアシリンダは電気部品としてオートSWを使ってはいますが
オートSWをつけずに外部ファイバーセンサーなどにして
ファイバーのアンプを別の個所に置くことにより
完全に電気レスにすることが可能です。
このことは防爆環境でも使用可能
ということになります。
これはエレシリンダーにない特徴です。
エレシリンダーは
内部にモーターやエンコーダ、ドライバを持つため、
原則として電源と制御信号が必要です。
つまり、防爆環境では
エレシリンダーへの置き換えは不可能です。
④重さや大きさが違う
エアシリンダーとエレシリンダーでは
重さと大きさに結構 差があります。
エレシリンダーは
- 電気を回転運動エネルギーへ変換するモーター
- 回転運動を直動運動へ変換するボールネジ
- ボールネジを支持するベアリング
などの機構部品が含まれています。
ですが、エアシリンダーは圧力エアをそのまま
直動運動にするだけですので
ロッドと中がくり抜かれているぼデイのみの
シンプルな構造ゆえに
- 非常に小型
- 非常に軽量
という違いがあります。
実際に単純な2点間搬送で済むスペースは
他の機構によりスペースを削られて
狭い場所であることもまぁまぁあります。
また2軸で駆動系を組んでいる以下のような場合
水平駆動のアクチュエーターにさらなる負荷が掛かります。
まぁ 駆動系においてぎりぎりで設計していることも稀なので
余裕はあるかもしれませんが、単純な置き換えはできず
必ず確認が必要となります。
つまり、狭い個所の2点間搬送では
エレシリンダーではタクトが成り立たない場合があり、
2軸で駆動系を組んでいる上部エアシリンダ―の場合
下部の水平駆動系で必ず負荷確認が必要であり、
単純置き換えはできません。
⑤押し付け動作の違い
エアシリンダは2点間搬送以外にも
ワークの押し付けセンタリングにも使われます。
以下のような使われ方ですね。
この場合 コンパクトで素早い位置決め動作が
可能となります。
ですが、
エレシリンダーを使った押し付け動作は
タクトに気を付けなくてはいけません。
なぜなら―
- 押し付け動作自体は低速
(多くが20mm/sec以下) - 押付け判定時間に結構時間が掛かる
(場合によっては約0.3sec程度)
位置速度制御と組み合わせは可能ですが
押し付け動作自体は低速でなくてはいけません。
⇩詳しくは以下の記事にて⇩
エアシリンダは 例えば
低摩擦シリンダ等を、精密レギュレーターで制御すれば
極低圧=極低推力で運用が可能です。
さらに押付け動作センタリングは
ワークが軽いと負荷が軽くなる傾向があるので
電動シリンダより高速での押し付けが可能な場合が多いです。
かつ押付け判定時間も必要がない
つまりタクトに非常に有利な
以下の3拍子が揃っているわけですね
- 機器の厳選次第で極低推力
- ワークが軽ければ超高速動作
- オートsw検知で押し付け完了
つまり、押し付け動作時全体の速度に差がありすぎるため
エレシリンダーではタクトが成り立たない場合があります。
⑥まとめ
エアシリンダーをエレシリンダ―に置き換えが困難な
ケースを表にまとめました。
判断項目 | エアシリンダーが有利なケース |
---|---|
中間停止の柔軟性 | 多点停止・精度不要な場合 |
防爆対応 | 電気レスが必要な場合 |
設置スペースが狭い | 軽量・小型を優先する場合 |
押し付け動作タクト | 超高速+瞬時判定が必要な場合 |
本記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございます。