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機械設計歴20年以上T.surfと言います。
今回は以下に関する記事です。
【モーター知識】
押し付け動作の仕組みと制御
位置決めモーターのトルク制御
⇩本記事は以下の方にオススメです⇩
位置決めモーターを
使った押し付け動作
を教えて欲しい
⇩本記事を読むと以下が わかります⇩
押し付け動作は
位置速度の制御
ではなくトルクを
制御しています。
①押し付け動作とは
押し付け動作とは 文字通り押し当てる動作のことで
用途としては
- 圧入
- ワーク押し当てによるセンタリング
等があります。
補足すると
ワーク押し当てによるセンタリングとは
ワークを設置するコマに対して
ワークを押し当てて位置を補正する動作です。
通常これらはエアシリンダで行うのが
簡単で確実なのですが
諸事情によりモーター等で行わなければ
いけない場合がある場合に押し付け動作を
行います。
なお、この時に位置決めモーターは特殊な
制御モードへと移行します。
それが押し付け動作時のトルク制御です。
②押し付け動作でのトルク制御解説 その1
押し付け動作の時は特殊な制御モードとなります。
それがトルク制御なのですが
まずはなぜ位置速度制御
(一般的なフィードバック制御 以下位置速度制御)で
押し付け動作がNGなのかを説明しなくてはいけません。
位置速度制御は以下の記事で解説しましたので
以下の記事を御参照ください。
位置速度制御で押し付け動作を行うとどうなるのか?
まず押し当て動作は一定の力でワークを押し当てたいので
ストロークエンドより手前で止まることになりますよね?
しかもワーク毎に公差を持っていますので
停止位置も不確定となります。
この状態で位置速度制御を行うとすると
流れは以下となります。
step1
まずは通常のフィードバック制御の流れです
step2
ワークを押し付けた状態で停止するので
指令位置まで到達しません。
⇩
step3
位置速度制御(いわゆるフィードバック制御)では
サーボアンプは
『位置決めユニットから指示された目標位置まで
到達しなくてはいけない そのための補正をする』
という判断をします。
サーボアンプはモーターが目標位置に到達できるように
トルクを大きくして目標位置に到達するようにします。
そのために サーボアンプはモーターへ
トルクを大きくするために大電流を供給します。
⇩
step4
しかし、負荷が大きいまま無理にトルクを出そうとすると、
サーボアンプが過電流を検知し、
保護機能(サーボエラー)が発生します。
サーボエラーが発生しなかった場合でも、
大トルクによってボールネジや機構部品が破損する可能性があります。
⇩
step5 結論
押し付け動作時に位置速度制御で運用すると
NGの理由は
- 位置決めユニットからの指令
- エンコーダーからの現在位置フィードバック
上記を補正をしようとしてしまうからです。
押し付け動作ではこの補正動作がNGなのです。
③押し付け動作でのトルク制御解説 その2
押し付け動作はトルク制御でなくてはいけません。
トルク制御では位置速度はみていません。
トルクを見ています。
トルクを一定にする制御となります。
つまり、前述のSTEP2の状態となっても
補正動作をしません。
サーボアンプはトルクを一定にしようとするだけです。
つまり、以下のような流れになります。
step1
負荷が掛かった場合にモーターの出力トルクは
下がってしまいます。
なぜなら負荷によって打ち消されてしまうからです。
それは何でわかるのか?
回転数の低下でわかります。
エンコーダーで回転数を監視しているからです。
⇩
step2
サーボアンプはトルクの現象を回転数で把握したので
負荷によるトルク低下を補正しようとして
適切な電流を供給します。
その結果論として回転数を維持しようとします。
⇩
step3
そして 当て止めとなった時にトルク維持のために
電流値がさらに増加 トルクを上昇させますが
最適な押し付け力を維持するために上限電流値を設定しているため
- ある程度の推力を維持
- 過剰な電流を防ぐことでサーボエラーを抑る
ということをしています。
上記のように
位置の補正動作をしないでトルク(回転数で監視)を
補正ことで過剰なトルク(=過電流)
を防ぎサーボエラーを防ぐことができるのです。
またエンコーダーで回転数を監視しているということは
位置も把握しているということです。
なので 押し付け動作が終わった後は速やかに
所定の位置に戻ることが可能となります。
④押し付け動作の注意点と対処法
高速押し付けはNG
押し付け動作を実現するために注意すべき点は
低速であることが条件です。
なぜなら高速でワークにアプロ―チすると
回転数の急な減少に適性な電流値の量の判断が追い付かず
大電流が流れしまうことがあるからです。
それにより トルクが大幅に増加してしまい
また回転数が増加➡トルクを再調整
というようにトルクが一定になりづらいからです。
そこで低速にすると
- 負荷の変化に対する電流補正を
滑らかに実行できる。 - 電流値の過剰な変動を抑えることで、
トルクを安定して維持できる。
つまり
トルクの急変動がなくなるため、押し付け動作がスムーズになり、
再調整の頻度も低減できるということですね。
タクト向上のための工夫点
この押し付け動作実は位置速度制御と組み合わせることが
可能です。
押し付け動作自体は低速ですが例えば以下の運用が可能です。
ワークのアプローチは位置速度制御で高速接近
ワークを押し出す直前で減速してトルク制御
このようにすればタクトの問題を
ある程度クリアが可能となります。
⑤まとめ
- 押し付け動作は位置を補正しない
- 押し付け動作はトルクを一定制御
- 押し付け動作はトルクを上限規制している
- そのためワークに極力ダメージを与えない
- 押し付け動作は位置速度制御の後に可能
- ワークの押し付けセンタリングや圧入に使用される
本記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございます。