tsurfの機械設計研究室

サーボモーターやエアシリンダの選定計算なども扱っている技術ブログです

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モーターを使った駆動機構で必要トルク以上のモーターや減速機が付いている理由

本ブログの御訪問ありがとうございます。
機械設計歴20年以上のtsurfと言います。

 

今回は以下に関する記事です。

モーターを使った駆動機構で
必要トルク以上のモーターや
不必要そうな減速機が付いている理由

 

⇩本記事は機械設計初心者の方で以下の方にオススメです⇩

f:id:tsurf:20210605171303p:plain
とある
未経験機械設計者

なんかすごい
モーターや
減速機がついているよ
本当に必要?

 

⇩本記事を読むと以下が わかります⇩

管理人T.Surf

一見すると
適当に選定して
いるように見えるけど
理由があるんですよ

 

 

①結論

よく他の設計者の設計において、

なんでこんな
でかいモーターや
減速機が
ついてるんだろ?

 

と思うような大トルクのモーターや
一見不要に見える減速機がついている
場合があります。

 

これは適当に設計しているわけではありません。
(もちろん、そのようなケースもありますが)

 

管理人も実は結果論として

  • 必要トルク以上のモーターの選定や
  • 一見必要に見えない減速機を付ける

ことが、多々あります。

 

結論を言うと

駆動機構の全慣性の合計を
モーターの許容慣性モーメント以下
に抑えるため

に結果としてそうなってしまいます。

 

 

 

②モーターの許容慣性モーメントとは

モーターの許容慣性モーメントとは

モーターが許容できる
慣性負荷の合計の大きさです。

 

これがモーターの許容慣性モーメントより大きいと
短時間での停止が難しくなります。
要は止まりづらくなります。

 

なお、モーターの許容慣性モーメントは
モーターのカタログにある

ローター慣性の◯◯倍以下

と表記されるものが、それにあたります。

 

 

③なぜ大トルクのモーターや必要に見えない減速機?

必要以上に大きく見える大トルクの
モーターを選定せざるをえない理由は

大きいモーターほど
許容慣性モーメントが大きいから

となります。

 

一見必要のないように見える
減速機をつけざるをえない理由は

減速比が大きいほど
駆動系全体の慣性モーメントが
小さくなるから

となります。

 

特に大きな慣性モーメントを抑えるには
減速機が有効な手段であり、
減速比の2乗分の1となります。

つまり減速比が50の場合
慣性モーメントが脅威の1/2500となります。

 


例えば以下のようなボールネジ機構の場合

 

慣性モーメントは以下の式となります。
J
={(Js+Jbc) / i²}+Ja+Jb

機構全体の慣性モーメント : J Kg.m²
減速比 : i 無次元
直動慣性モーメント合計 : Js Kg.m²
回転部品の慣性モーメント合計 : Jbc  Kg.m²
減速機の慣性モーメント : Ja Kg.m²
ローター慣性モーメント : Jb Kg.m²

詳しくは以下の記事を御参照願います。

 

減速機によって減速される以下

  • 直動されるワークやボールネジナット
    搬送ジグ等の直動慣性モーメント
  • ボールネジの慣性モーメント
  • ベアリングナットの慣性モーメント
  • アンギュラベアリングの内輪の慣性モーメント
  • 深溝玉軸受けの内輪の慣性モーメント
  • 内輪の慣性モーメント
  • カップリングの慣性モーメント

上記の合計が減速比の2乗分の1の
対象となります。

 

以上の式を見てわかるとおり

減速される部分の慣性モーメントは
減速比の2乗分の1になり
大幅に小さな値となります。

 

 

④駆動系の慣性モーメントが大きく成りがちな機構

結論から先に言うと

  • インデックス回転
  • ラック&ピニオン
  • ベルト駆動

等が挙げられます。

 

逆に駆動系の慣性モーメントが
比較的小さくなるのはボールネジ機構です。

 

これらの違いは何か?

モーター単位回転当たりの移動変化量です。
ラック&ピニオンはモーター1回転当たりの
直動移動量が非常に大きいですよね。

慣性モーメントは回転させづらさですので
ラック&ピニオンなど単位回転の移動量が大きい
ということは当然 慣性負荷も大きくなります。

 

逆にボールねじのリードピッチは細かいので
単位回転当たりの負荷が小さいと言えます。

 

従ってこれらの機構には必要以上に
大きいモーターや不要に見える減速機等が
ついている場合が多くなります。

 

本記事は以上です。
最後までお読み頂きありがとうございます。

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