tsurfの機械設計研究室

機械設計未経験もしくは初心者の方に向けたブログです 基礎的な知識やスキルを記事にしていきます  ブログのお問合せフォームからお気軽に連絡ください

【中小製造業の経営者様への提案】管理のための管理の弊害(設計工数)

本ブログの御訪問ありがとうございます

機械設計歴20年以上のtsurfと言います

 

今回は以下に関する記事です

【中小製造業の経営者様への提案】管理のための管理の弊害(設計工数)

 

  

⇩本記事は以下の方にオススメです⇩

f:id:tsurf:20210630092915p:plain

とある中小企業の
経営者

うちの設計は設計工数が多い
設計工数が多くて赤字だ

 

⇩本記事を読むと以下が わかります⇩

f:id:tsurf:20210611183707p:plain

管理人TSURF

断言しますが
設計工数が多いことと
黒字 赤字は関係ありませんよ

 

 

 

 

①結論

中小企業の経営者様の中には 

装置案件にて 設計工数が嵩むと 赤字だと問題視する方もいます

 

特に見積もり中の 想定設計工数時間に対して 

実際の設計時間がオーバーした場合です

 

断言しますが 装置売り上げの『黒字 赤字』に設計工数費は関係ありません

お客様に提出する見積もりの中の設計工数費は

あくまで  お客様に人件費を請求するための見かけの数字です

 

それ自体は 悪いことではありません

むしろ 人件費請求のために必要なことです

 

しかし 設計時間を設計工数で管理し 赤字か黒字かを判断材料に

すること自体は間違っていると考えます

 つまり設計工数とは以下と考えるのです

●お客様に請求する設計工数費は 人件費請求上の 見かけの数字であること

●設計工数は 装置売り上げの黒字 赤字として参考にすらならないこと 

●参考になるとしても限定条件下であること

●設計時間を設計工数で管理すると思いもよらない弊害が出る

●設計工数がオーバーを責めることは 思いもよらない弊害を発生させる

 

上記の根拠や実例を以下にそって解説したいと思います

 

工数が実際に機能する例を挙げます

    ⇩

設計者にとっての設計時間とは何なのか?を解説します

    ⇩

工数が虚数と考える根拠を解説します

    ⇩

設計時間を設計工数で管理する弊害の実例と実体験を解説します

   ⇩

設計工数に関する実体験を解説します

 

 

②設計工数の考え おさらい

工数とは

設計者や組立、加工作業者のの作業時間を

時間単価 x 実設計時間で表し 原価の一つとして含める考えですよね

 

以下例を挙げると

ある一つの装置に関して5000万で受注したとします

しかし実際の利益は受注金額から原価を引いたものになり

以下のような計算式になります

 

利益=5000万-(部品原価+諸経費+人件費)

 

この人件費の計算を以下のようにしたものを工数といいますよね

人件費(工数)

   =

(設計人数 x 社内独自計算の時間単価 x 設計作業時間)

    +

(現場作業人数 x 社内独自計算の時間単価 x 設計作業時間)

 

ここで 例えば装置の見積もりを以下として お客様に提出し

受注したとします

  

受注金額         :5000万

 

部品原価:受注金額の7割 :3500万

諸経費(輸送費など)    :200万

現場作業時間        :12万 (20時間)

設計作業時間        :24万 (40時間)

(時間単価 0.6万/1時間)

 

利益額としては

5000万-(3500万+200万+12万+24万)=1264万となります

よって利益率約25パーセントとなります

 

社内規定により 例えば装置の利益率を25パーセント以上で

なければならないとした場合ギリギリとなってしまいます

 

すると 以下の疑問が成り立ちます

設計作業時間を40時間で見積もりを提出している以上

設計時間が40時間を オーバーしたら 赤字になるのでしょうか?

 

一度 検証してみましょう

 

 

③工数が実際に機能する例

工数が実際に機能する例を上げましょう

それは家電や 自動車部品など 民生品の製造現場であるライン作業です

 以下の理由からです

●実際に従事している作業者は 派遣などの非正規雇用が多く時給制であること

●月の生産台数が設定されていること

●作業手順 作業内容が規格化されており 

 原則として 誰がやっても作業時間はかわらない

 

以上の理由から民生品の単価は容易に以下のように算出されます

 

民生品の単価=

生産コスト+{(時給x月の作業時間x人数)/(月の生産台数)}

 

売り上げを確保するのであれば 部品単価が上記を上回ればいいのです

 

つまり工数は 時給x作業時間というように

単純な条件のもとに成り立つものだということもわかります

 

では 設計の場合はどうでしょうか?

④で解説します

 

 

④機械設計業務とは

機械設計業務とは 単純に時間単価で片づけられるような

決められた手順 決められた手法という条件で

行われる いわゆる ライン作業ではないということです

●知見がない分野は調べることもあります

●業者と打ち合わせをすることもあります

●設計の過程で 成り立たないと気づけば 再検討することもあります

●新しい知識や経験 技術の習得が含まれます

 

つまり 単純に設計している経費としてではなく

新たな知識 技術の習得ための投資費用と見ることもできます

 

 

 

⑤設計工数が虚数である理由

👉理由1 設計者の多くは時給制ではなく月給制であること

お客様に提出する設計費を時給ですが 実際は月給の固定費です

 

これにより 社内で一人当たりの工数を規定しても

残業や休日出勤をするかしないか

仕事の混み具合で利益がまったく違った結果となってきます

 

要は実際に掛かっている費用は 設定されている時間単価ではなく

固定費+ランダム費ということが言えます

 

 

👉理由2 固定した生産台数が設定できないこと

装置は月の生産台数など設定できません

あなたが 扱っている業界の景気 お客様の設備計画 

お客様の要求装置などによるからです

 

つまり 生産台数もランダムということになります

 

👉理由3 設計という業務の性質

③をご参照願います

 

 

👉理由のまとめ

●月給制による単位時間の費用のランダム性 

●月毎の生産数や装置の多様性によるランダム性

●作業内容のランダム性

 

これだけのランダム要素が強い中で 

時間で固定費を決めれる 根拠がわかりませんよね

 

会社維持のための諸経費や人件費はあくまで固定であって

実際に時間あたり5000円消費しているわけではないのです

 

われわれは 時間単価5000円の給料を もらっているわけではありません

では 時間単価5000円は どこに消えているのでしょうか? 

 

 

⑥設計時間を設計工数で管理する弊害

👉 弊害1 設計者考えなくなり 会社の技術力低下』

これはインターネットにあった記事ですが

それはそうでしょう 

 

設計時間を設計工数で縛り それを上回ったくらいで

評価に響いたりや叱責に繋がるのであれば 誰もリスクと工数が

はねあがる新規検討などしなくなります

 

 

👉 弊害2 効率ばかりが重要視され 教育は損失経費となる』

実話ですが 

以前勤めたことのある会社Aという会社での実話です

 

私は開発部にいて 新規の設計を自分で行っていましたが

 

装置の設計部隊の部署では

設計工数を見積もり提示以内に納めることに固執し 

極端な効率化を図った結果以下となりました

 

昔からいる外注さんが メインで設計をして

社員がバラシをやるという 本末転倒な結果となってしまいました

 

つまり 

昔からいる外注さんは 経験と知識があり設計自体の工数が少なく済む

社員は 外注さんほど 知識と経験がないから 勉強に割く時間もあり

工数が多くなってしまうという考えです

 

これを放置すると どうなるでしょう?

外注さんが 年齢でリタイヤすると同時に 

設計技術 知識 経験 ノウハウが失われますよね?

 

なぜなら 外注さんには 

自身が得た 設計技術 知識 経験 ノウハウ

社員に展開する義理はあっても 義務はないからです

 

逆にそれを 新たなビジネスの交渉材料に使われるかもしれません

 

👉 弊害3 装置の改良が工数の無駄となる

以下の記事を参照してください

 

 

 

👉 弊害4 装置の見積もり価格が跳ね上がり 受注が難しくなる』

見積もりする側も 実設計工数が見積もり設計工数を上回ると

想定時間の甘さを叱責されるため

見積もりの工数時間を多くとるようになってしまうからです

 

先ほど ご紹介した会社Aでは 見積もり設計工数が実設計時間

を収めることが 利益になると考えています

 

 

設計工数だけで 装置の部品原価をはるかに上回る

情けない見積もりを提出せざるを得ず 装置価格が高騰します

 

その結果 見積もりで 工数を常識的に考えている普通の企業様に

相見積もりで負けてしまう結果となります

 

「この案件だけは 絶対に受注する」という案件でさえ

受注を見送られる形となってしまいました

 

 

⑦実体験に基づくおかしな現象

設計工数が虚数であることの実例として以下をあげます

⑥でご紹介した会社Aで ある装置Zの大量受注となりました

 

以下 その時の設計管理職Aさん 設計管理職Bさんの会話です

 

Bさん「装置Zがこんな受注したらウハウハだろう」

Aさん「何を言っている 工数オーバーで赤字だよ」

 

しかし その年は空前の利益を上げていました

 

いろいろな要素もあったのでしょうが 装置単品は設計工数や

組立工数による赤字なのにそれが大量受注で何故 

空前の利益が出るのでしょうか?

 

まさしく 設計工数がいかに虚数であるのかの好例です

 

⑧工数に関する奇妙な思考実験

例として 設計ではなく組立の現場で考えてみましょう

 

例えばある装置の搬送ロボットに関し 以下の想定で考えてみます

・構成部品代   200万

・組立工数費   時間単価6000円x人数10人x40時間=240万

・合計      440万

 

コストダウンを検討する会議の場で例えば 上記の例を出し

現在440万 掛かっています(ここが そもそもおかしいのだが)

 

提案として

「現状の社内設計組立している駆動系相当の他メーカーの

250万のロボットを買えば取り付けだけとなり

工数が掛からないので180万円のコストダウンとなります」

 

上記の例は あきらに おかしな点があります

 

まず この例でポイントとなるのは ロボットの値段は実際に

外に出ていく費用で 工数費は外に出ていかない費用です

ということは 以下の想定も成り立ちます

 

「現在は特に忙しい時期ではありません

ところで 今まで10人で組み付けていたのが一人で済むようになり

ました するとロボットが早く組みあがってしまいました

残り作業者は時間が空いているので掃除をしました」

 

こうなっていまうと コストダウンはしていませんよね?

なぜなら 上記の例では

社内設計組立の駆動系は200万 購入品のロボットは250万

ところで工数のほうは この比較の場合 まったく影響してきません

ロボットのほうは 空いている人員ができてしまっています

 

すると実は50万の大赤字となっていることに気づきますでしょうか?

 

ですので この場合 コストダウンが成功するのは

社員全員が常に忙しい状態でかつ次の装置の組み立て案件が矢次に

スケジュールされているという限定条件のみで成り立つかもねという程度です

 

どちらにしろ 作業工数を前提にした工数による原価低減というのは 

他の不確定要素が多すぎるということです

 

また この例はあくまで例なのですが

「効率が上るのはいいことだろ」 という方もいるかもしれません

 

しかし だから250万のロボットというのは飛躍のしすぎです

この例の場合 組立工数が10人で40時間ですが

実はこの工数費は ただでさえ慣れれば減る不確定要素である上に

アイデア次第で減らせる余地がまだあるのです

 

主婦が家事に費やす時間単価は1470円だそうです

 

あなたは その工数がもったいないから 毎日3食外食しますか?

それと同じことです

 

⑨まとめ

設計時間を設計工数で縛り それを利益の指標とすることに

意味はなく それどころか 弊害しかありません

 

❑今回の記事で提案したいこと

 👉提案1

お客様に請求する見積もりに関しては 

例え新規であるため 工数時間が多いと予想されていたとしても

設計工数は流用図の出図程度の時間としましょう

 

理由は 

装置の値段が跳ね上がります

どうせ 実設計工数費と見積もり工数費は 利益という観点で関係ありません

 

なぜなら 会社の持続に必要な経費と人件費は固定費であって

設計者の時間毎に消費するものではないからです

 

 

👉提案2

その装置がどれだけの利益だったかの試算は 

設計工数ではなく別の試算が必要です

 

設計工数など 

お客様への人件費請求のための 見かけの数字でしかありません

中小企業経営者である あなたが 新たな試算の枠組みを作りましょう

 

👉提案3

もし 設計工数が利益に反映するという考えが捨てきれないのであれば

実際に 装置の納入実績から 複数のモデルを用意して試算してみましょう

おそらく ランダムで まったく影響がないことがわかるはずです

 

すくなくとも 設計時間を工数での管理に固執するのであれば

あなたは 以下の問いに だれもが納得できる回答をしなくてはいけません

 

●一人当たりの時間単価がどこに消えているのか?

●家事の時間単価が1470円であれば 毎日3食外食するのか?

 

 

❑今回の記事で言いたいこと

社員一人一人の工数を調査し それに対し どうしたら

より効率化を図れるのかを考えるのは管理職や経営者の仕事です

 

それを 機械設計者の負担を少しでも取り除く方向にできたら

それは 改善のための管理となり すばらしい管理と言えます

 

しかし 調査した一人一人の工数に対し 見積もりの想定時間

をオーバーしているから赤字だ 工数を減らすようにしろ

となると それはかえって 機械設計者の心理的負担となります

 

その負担はかえって 設計者に無用な緊張と焦りを与え

余計なミスを誘発と 効率の低下を招きます

 

 

このような 意味のない管理を 表題である『管理のための管理』

と呼び 主に以下の弊害があります

 目先の小さな効率は 将来の大きな損失となる

  

 

本記事は以上です

最後までお読みいただきありがとうございます