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機械設計歴20年以上のT.surfと言います。
今回は以下に関する記事です。
ソリッドワークスの3DEXPERIENCE、
本当に機械設計に必要なのか検証する
⇩本記事は以下の方にオススメです⇩
ソリッドワークスの
3Dエクスペリエンス?
最先端のものなら
導入すべきだ
⇩本記事を読むと以下が わかります⇩
待ってください
革新は必ずしも
良い結果となるとは
限りません。
既存のいいところを
丸ごと否定して
改悪となることも
珍しくありません。
- ①3Dエクスペリエンスの評価の前にソリッドワークスの基本
- ②結論 機械設計において3DEXPERIENCEの必要性に疑問
- ③3Dエクスペリエンスが機械設計においてメリットにならない理由
- ④実際の一般的な中小企業において
- ⑤機械設計における3DEXPERIENCEのデメリット
①3Dエクスペリエンスの評価の前にソリッドワークスの基本
3DEXPERIENCEは、
3Dデータをクラウド上で一元管理できるシステムとして
紹介されています。
革新的な仕組みとされていますが、
実際の機械設計の現場ではどのように評価されているのでしょうか?
管理人は、SOLIDWORKSが
パラメトリック設計に固執しすぎて実用性を損なっているCAD
だと考えています。
設計の柔軟性を欠き、拘束に強く依存することで、
かえって設計変更が困難になってしまうのです。
その上、パラメトリック処理の影響で動作が非常に遅く、
非実用的な側面が目立ちます。
さらに、3DEXPERIENCEのクラウド化により、
動作がさらに遅くなったという話を耳にしました。
そこで、このシステムが
- 本当に機械設計にとって有益なのか?
- それとも単なる「革新のための革新」なのか?
を考察してみたいと思います。
賢明にも(幸いにも?)、
管理人の会社では3DEXPERIENCEを導入していないため、
客観的な視点で調査した内容をもとに考察を進めていきます。
②結論 機械設計において3DEXPERIENCEの必要性に疑問
3DEXPERIENCEのクラウド化が掲げるメリットは以下の通りです。
- 異なる拠点において、どこでもアクセス可能
- 異なる拠点での複数設計者による同時設計
- 異なる拠点での共有とマークアップ
拠点が異なる部署などが3Dデーターに
変更要望などを書き込める - 変更承認プロセスがソリッドワークス内で完結
まず 基本となっているデーターのクラウド化ですが
そもそも機械設計は中小企業がメインとなっています。
機械設計が必要とされる生産設備は
- 一品一様
- 受注も不安定
と言う特徴をもっておりますので
大量の社員を養う大企業では小回りが利かないんですね。
規模が小さい中小企業が設備ビジネスを展開できる理由が
ここにあります。
では、中小企業での機械設計の場合3DEXPERIENCEの
クラウド化によってどのようなメリットがあるのでしょうか?
-答えはー
機械設計の現場では、これらのメリットは活かされるどころか、
むしろ動作の遅延という課題を生む可能性があります。
次章より、その理由を明確に説明していきます。
また、ソリッドワークスは機械設計用との触れ込みですが
この3DEXPERIENCEについては
- 量産市販品を設計する製品設計
- 設備を設計する機械設計
上記の違いを理解せずに混同している節があります。
③3Dエクスペリエンスが機械設計においてメリットにならない理由
異なる拠点において、
どこでもアクセス可能
複数拠点の設計チームが協力する場合に便利だが
中小企業では生産に関して複数拠点を持っている企業が
少なくほとんどは社内で完結することが多い。
そのためメリットが非常に薄い。
たとえば海外拠点との共同設計が必要な場合なら利点があるが、
そのような中小企業は限定的と思われる。
リアルタイム
コラボレーション
製品設計ではデザイナーやマーケティングチームとの
連携が必要な場面があるが、
機械設計では基本的にエンジニアが単独または少人数で
設計を進めるため、リアルタイム編集の必要性は低い。
また ただでさえリアルタイム編集は
複数の設計者同士での競合保存事故が生じやすい
リアルタイム編集自体の是非が問われるべき
異なる拠点での共有と
マークアップ
クラウドデーター上の3Dデーターにマークアップで
修正希望点などを書き込めるというが
例えば製品設計のような
- グローバルな複数生産拠点を持つ
- 様々な部署が関わるような大規模なチームが関わる
上記の特徴と違い、
機械設計の現場では、基本的に同拠点同部屋にいる
近くの設計者同士で直接やり取りするため、
大規模ネットワーク的なレビューシステムは不要。
そもそもの問題点として
他部署が独自に書き込めるような仕組みは
設計者の設計意図の説明がない前提での想定なのだろうか?
設計者の設計意図を説明するのであれば
チームスなどで画面を共有して
設計者が設計意図の直接の説明のもと
議論すべきであり、
そうなるとチームスで十分ということになる。
変更承認プロセスが
ソリッドワークス内で完結
製品設計ではデザインや市場での
販売戦略、量産性も重要視されるので
マーケティングや製造部門と調整しながら進める。
その場合は複数にまたがる部署での
システム承認は有効かもしれない。
だが、機械設計は設備の機能以外は
せいぜいメンテ性、組立性がもとめられる程度
そんなことよりも部品点数が多く大型となり構造が複雑なため
設計者が上司に設計意図や詳細を直接説明する必要がある。
あとは組立課に組立上の問題点がないか見てもらう程度
しかもこれらは同時に行わないことが多い
したがって同拠点同室にいる上司に
説明➡修正➡承認というプロセスで
完結することが多いため、システム上の承認プロセスは不要。
④実際の一般的な中小企業において
この3DEXPERIENCEの内容を分析すると
どうやら大企業が得意とする家電や車などの
民生品の設計➡製品設計向けの機能だということが
読み取れます。
(本来ソリッドワークスは機械設計用と
うたっていたはず・・・)
大企業における製品設計であれば
生産拠点を複数持っていたり
以下のように多くの部署が対設計だけではなく
対他部署というように密接に関わってくることが
多いのも特徴です。
- 品質保証による品質検証
- 生産技術による量産性検証
- デザイナーによるデザインとの整合性
- マーケティング部による販売戦略
など・・・
ですが、機械設計の場合は
設計自体は同拠点同室にいる他の設計者と連携を取り
設計を進める
⇩
同拠点同室にいる上司に実際にCADデーターを見てもらい
設計自体の方向性を確認する
⇩
これで設計の方向性が決まります。
そして・・・
⇩
同拠点にいる組立課にレビューをして組立上の問題点があれば修正
⇩
設計そのものの確認と組立の整合性を成り立たせた上で
再度 同拠点同室にいる上司に承認をもらい出図
という形になります。
従って、言ってしまえば 一般的な中小企業の機械設計では
3DEXPERIENCEは必要ないと言わなくてはいけません。
⑤機械設計における3DEXPERIENCEのデメリット
本ブログで取り上げているように機械設計では
パラメトリックは必要ありません。
現状の今を履歴や拘束で規制してしまっているため
かえってこれからどうするかを考える
設計変更に柔軟ではなくなります。
機械設計は製品設計と違い部品点数が多くなるので
- 大規模アセンブリでは拘束が複雑になりすぎて
どこを変更すればいいのかがわからなくなる - また変更により自分が望んだ変更にならず
不本意にアセンブリが崩れる可能性がある - 拘束エラーが頻発すし、修正に莫大な時間が
掛かる場合が出てきてしまう - 最悪は拘束を削除し、新たに拘束し直さなくては
いけなくなる
第一設計の本質は設計変更ではありません。
設計の本質とはー
2Dレイアウトによる素早く質の高い検討にあります。
ソリッドワークスではこれができないことのほうが問題なんです。
3DEXPERIENCEはこのプロセスを強化するものでありません。
そもそもですがソリッドワークスの動作の遅さは
その大して役に立たないパラメトリックにあります。
そのパラメトリックの問題を見直さずに
3DEXPERIENCEでクラウド化というのは
3DEXPERIENCE自体が必要ないばかりか
- 大規模アセンブリの更新にさらに時間がかかる
- クラウド環境ではネットワークの影響で応答速度が低下
- 最悪、出図に間に合わなくなる可能性
などの弊害が出てくる可能性があります。
本記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございます。