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機械設計歴20年以上のT.surfと言います。
今回は以下に関する記事です。
【中小製造業を守りたい】
機械設計者にとっての成果主義に関する疑問
成果主義について
一度冷静に考える必要があります。
成果主義は
設計者のモチベーションの低下と
会社の技術力を低下させます。
- ①結論
- ②成果主義の定義
- ③成果主義の条件解説
- ④機械設計の成果主義は非現実的
- ⑤機械設計者の成果主義 その他の弊害
- ⑥では、どうすれば?
- ⑦管理人が提案する新しい評価法
- ⑧成果主義:目標建てをさせて、その評価
- ⑨まとめ
①結論
機械設計者の成果主義による評価はかなり無理があります。
その上で 会社の技術力を低下させる可能性があります。
ここでは、まず、成果主義とは何か?を通じ
成果主義の定義を確認します。
そして、
機械設計者にとって成果による評価は、現実的なのか?
を考察します。
②成果主義の定義
まずは成果主義を定義します。
成果主義とは 『成果に対して評価する』というもので、
『社員の給与に影響する評価に差をつける』評価制度です。
ただし 成果主義を正しく成り立たせるためには、
以下の2点の条件があります。
- 絶対的客観性が保証された評価基準がある
- 絶対的客観性が保証された数値評価がある
上記は後ほど後述しますが、
つまりは、以下のような
えいやー感満載の芸術点評価ではないことです。
5段階で評価しろって言われたから・・
う~ん
〇〇君は頑張ったから、ここの項目は4
でも、この項目に関しては3にしよう
なぜか?
もし芸術点評価であれば、それは評価する者の感性による
ものであり、そんなものは『給与に影響する社員の評価』に
差をつけていい根拠とは到底なりえません。
感性による芸術点評価は、感性による好き嫌い評価です。
そのうち(いや すでに?)
個人的感情の加味した好き嫌いも入ってきます。
あなたは好き嫌い評価で差をつけられて納得できますか?
少なくとも私はできません。
好き嫌い評価をされるくらいであれば
年功序列のほうが、まだ正当性があります。
③成果主義の条件解説
上述のとおり、最終的に給与に差をつける成果主義による評価が
できる条件は以下であると解説しました。
- 絶対的客観性が保証された評価基準がある
- 絶対的客観性が保証された評価数値がある
では絶対的客観性とは何かを解説します。
ここでは営業の評価を例にします。
絶対的客観性とは
営業の評価を例にしますが、
受注金額を入れると、例えが複雑で面倒くなるので
受注数のみの評価とします。
案件を受注できた数0件を評価0とします。
この評価0は
0件であれば評価されないという指針であり、
だれが聞いても納得がいく
絶対的客観性が保証された評価基準と言えます。
それに対して 3件受注した場合に評価3となります。
これは 3件受注をとれたかどうかという
絶対的な数値であるため
絶対的客観性の保証された評価数値と言えます。
このように 絶対的客観性とは
否定するのが不可能な普遍性と言えます。
だからこそ 評価に差をつけられ
給与に差をつけられても、納得せざるをえないのです。
つまり営業であればかろうじて成果主義的な
評価方法が成り立つかもしれません。
見逃される欠点
先ほど 『営業であればかろうじて成り立つかも』
と言いましたが、それでも欠点があります。
それは長期的な営業が評価されない
ということです。
何年か先に結果がでそうだが現在は結果がでない
プロジェクトは、その期にどう評価されるのでしょうか?
そのような営業は不要でしょうか?
つまりは、
営業においても成果主義は難しいということです。
④機械設計の成果主義は非現実的
機械設計の成果主義による評価は、まず不可能です。
前章までで 以下があるからこそ成り立つと解説しました。
- 絶対的客観性が保証された評価基準がある
- 絶対的客観性が保証された評価数値がある
しかし 機械設計の場合
成果物である設計に対して
評価基準である評価0はどう定義するのでしょうか?
仕様書の内容でしょうか?
ただし仕様書は 最終的な欲しい機能や目的
だけを提示しているにすぎません。
従って、
その結果を導くための構造は、それこそ設計者の個性により
解釈が違うので個性が出てきます。
- コストはかかるが 後々の調整が楽だったり・・・
- コストが安いだけで、後々デメリットのある構造だったり・・
言い方を変更して、もう一度聞きますが、
評価基準である評価0の設計とは、どのような設計でしょうか?
もし、それがわかっているのであれば
最初っから、それを基準に設計しますよね?
つまり
絶対的客観性の保証された評価基準
の設定は不可能です。
なぜなら 評価0がわからないから
評価0が不明な上
設計の良し悪しは単純な数値による評価も不可能です。
つまり
絶対的客観性が保証された
数値評価も不可能です。
ましてや、
実際の設計では上司にレビューするはずです。
上司の了承も得た上で詳細設計を進めます。
だから 冒頭でも示した通り 成果主義による評価は
以下のような えいやー感満載の
芸術点評価となってしまうんです。
5段階で評価しろって言われたから・・
う~ん
〇〇君の今回の設計は3
これで
設計者が納得できると思いますか?
⑤機械設計者の成果主義 その他の弊害
会社の技術力の低下
成果主義は技術力の低下を招くでしょう。
なぜなら、個人個人で持っている
個人のスキルや知識を水平展開したがらないからです。
なぜか?
それは、成果主義の元では 周りの設計者は
仲間ではなく 蹴散らすべきライバルだからです。
設計者同士のスキル、知識の共有や
後輩に対する教育をするのも
成果のうちだ
しかし、スキルや知識の水平展開したとしても
その評価は、その期のみの評価です。
来期からは、スキルアップしたライバルとの
厳しい競争となるでしょう。
それよりは、スキルや知識をずっと個人で持っていたほうが
少なくともライバルに対しては永久に有利な立ち位置となります。
このような状態では設計部の設計力の向上が
望める余地はありません。
設計者のモチベーションを下げる
エイヤー感満載の芸術点評価でも
評価され給与が上がればモチベーションは上がるでしょう。
では、
大した根拠もないエイヤー感満載の芸術点評価
ましてや 好き嫌い評価によって
評価されず給与の下がった設計者はどうなるでしょうか?
低モチベーションになる可能性も高く
そうなるとスキル向上の意欲もなく低スキルとなりえます。
低スキル 低モチベーションの設計者は使い物になりません。
こうなってくると、以下になります。
- 低スキル 低モチベーションの設計者をそのまま使う
- 低スキル 低モチベーションの設計者を切り捨てる
- 低評価を下された機械設計者のほうから、
愛想をつかし辞めていく
つまり 中小製造業にとって、
切り捨てた人員の補充が容易であることが
成果主義を導入する絶対条件となります。
現実問題として 中小製造業にとって
設計者は希少性の高い存在のはずですよね?
その希少性の高い設計者が
モチベーションを下げ
最悪離れていくかもしれません。
⑥では、どうすれば?
管理人の提案としては
年功序列にすることです。
ただし 私自身は年功序列自体は
最善だとはおもっていません。
では なぜ年功序列なのか?
少なくとも成果主義よりは、はるかにマシだし
年功序列よりいい制度がないからです。
もちろん 年功序列より(成果主義ではなく)
いい制度があればそれを採用すればいいと思います。
年功序列だと
能力の低い者や、怠けている者も
一緒に給料が上がっていくだろ
そうならないようにするのが
経営ではないでしょうか?
会社が社員に指導、教育を
していくものだと思います。
そもそもの問題として
『能力がない や 働かない』だとかの問題と
『年功序列』は関係ありません。
理由は、
成果主義だろうが 会社が教育、指導しないかぎり、
- 『能力がない や 働かない』問題が解決される保証はありません。
- 『能力がない や 働かない』人達が評価されない保証はありません。
なぜなら
成果主義は好き嫌い評価
だからです。
⑦管理人が提案する新しい評価法
管理人の提案する評価法です。
年功序列をベースとしつつも 変形成果主義と名付けた
新しい成果項目を導入します。
それは、設計スキルや成果物などに着眼しません。
設計部全体の技術力を底上げした人を
評価します。
我々機械設計者は 『機械設計ができてあたり前』
なのですから、評価されると言ってもそこまで差はつきません。
評価をすることが目的ではないのです
会社の技術力を挙げることが目的なのです。
かつ、成果という極めて不安定な評価に
身を晒されることなく、
年功序列の元 安心安定の中最大のパフォーマンスを
発揮してもらうことを目的としています。
これに関しては、
評価は芸術点評価となっても仕方ないでしょう。
理由は以下です。
- 年功序列で給与と昇給は保証されている
- 成果物とスキルの評価ではない
- 評価することが目的ではない
- 会社の技術力を上げることが目的
⑧成果主義:目標建てをさせて、その評価
成果主義でおこなれれるもう一つの評価である
『目標建てをさせて、その結果を評価』について
⇩以下を御参照ください⇩
⑨まとめ
- 中小製造業にとって大事なのは評価に差をつけることではありません。
- 設計者の技術を水平展開し、それを統合して
さらなる発展させることが重要です。 - 成果主義の導入は設計者同士の連帯を阻害します。
- 結局、成果主義はコストカット術です。
本記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございます。