tsurfの機械設計研究室

サーボモーターやエアシリンダの選定計算なども扱っている技術ブログです

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ステッピングモーターに対する誤解(2024.1月更新)

本ブログの御訪問ありがとうございます。
機械設計歴20年以上のtsurfと言います。

 

今回は以下に関する記事です。

ステッピングモーターに対する誤解

 

⇩本記事は機械設計初心者の方で以下の方にオススメです⇩

f:id:tsurf:20210605171303p:plain
とある
未経験機械設計者

ステッピングモーター
って位置決め精度
低いの?

 

⇩本記事を読むと以下が わかります⇩

管理人T.Surf

そんなわけ
ないと思いますが・・
管理人の考えを
解説します。

ステッピングモーターについては
以下を御参照願います。

 

 

①ステッピングモーターは繰り返し停止精度について

ステッピングモーターは
サーボモーターに比べて位置決め精度が低い
ということが言われています。

 

管理人は位置決め精度が低いというのは
繰り返し精度や分解能自体の精度が低いのか?
と思ったので

管理人T.Surf

そんなばかな
でも、まぁ
サーボに比べたらな

 

という感じす。
例えば

オリエンタルモーターのAZシリーズの
ステッピングモーターの繰り返し精度は

±0.05度以内とあります。

通常の装置であれば
ステッピングのモーターの繰り返し停止精度で
充分だと思います。

 

それに対してサーボの繰り返し停止精度は
ロータリーエンコーダーの分解能に依存します。

なぜなら、
サーボモーターは完全停止できないからです。

ロータリーエンコーダーの1分解能分を
行ったり来たりしています。

もともとがACモーターなので
時間とともに電流の流れが変化してしまうためです。

 

従って、この1分解能を行ったり来たりを
停止精度の振れ幅と仮定するなら 

あくまで理論上ですが
1分解能分が停止精度と言えます。

ロータリーエンコーダーの分解能22ビット
のサーボモーターの場合、1分解能は
8.58×10-5
となります。

このサーボの8.58×10-5度の繰り返し精度が
欲しければサーボ一択となります。

ですが、先述の通り通常の装置では
ステッピングモーターの繰り返し停止精度である
0.05度以内(オリエンタルモーターAZシリーズ)
であれば充分ではないでしょうか?

減速機付きであればさらに小さくなります。

 

 

②その他の位置決め性能について

その他の位置決め精度が低いと言われている理由を
確認してみると以下のような

  • オープンループ制御なので脱調が積み重なる
  • 分解能が低い

というようなものがほとんどでした。

 

たしかにこれはステッピングモーターの
デメリットでではあることは認めます。

ですが、それらは位置決め精度の低さというよりは
サーボモーターと比較した場合の
位置決め機能のデメリットと言うべき
だと思います。

 

つまり、位置決め精度に関するものとは
切り離して考えるべきことなのだと思います。

 

ステッピングモーターは位置決め精度だけで言うと
繰り返し精度や
ステップ角自体の精度は高く
繰り返し精度は先述の通りで

結果として位置決め精度は高いです。

 

次項よりデメリットである

  • オープンループ制御
  • 分解能の低さ

とその対処法を見ていきましょう。

 

 

③オープンループ制御

オープンループ制御であることは
確かにステッピングモーターのデメリットである
と思います。


脱調により位置がずれるというのはもっともですが

基本的にステッピングモーター自体が正しく選定されていれば
まず脱調は起きないはずです。

正しく選定というのは以下

  • トルク
  • 許容慣性モーメント

トルクだけではなく、許容慣性モーメントも
含めてです。

 

ただし、いくらステッピングモーターが
正しく選定されていても

何らかのトラブルで異常負荷の状況に陥れば
当然脱調はありえます。

 

そのような心配があればステッピングモーターでも

  • 脱調検知のタイプ
  • 脱調レスのタイプ

などがあり、通常であれば
脱調レスではなくても
脱調を検知できれば充分だと思います。

 

なぜなら
異常負荷で脱調というのは余程のことだからです。

つまり、
適切な選定や製品自体の選定で十分に対処可能なのです。

 

 

④分解能の粗さ

ステッピングモーターはモーター自体に分解能があります。

そのモーター自体の分解能は低く
エンコーダーによる高分解能と比較すれば
確かにデメリットかもしれません。

 

ステッピングモーターの分解能は

  • 5相ステッピングモーターで0.72度
  • オリエンタルモーターのAZシリーズの
    高分解能タイプで0.36度

となります。

ですが、
マイクロステップを活用すればさらに細かくできます。

 

ただ先述の繰り返し停止精度で説明しましたが
キーエンスのサーボモーターのエンコーダーの分解能は
22ビットであり、8.58×10-5 度です。

この8.58×10-5 度の分解能が必要であればサーボモーター一択
となるでしょう。

 

ですが、通常の装置であれば

ボールネジ機構であれば
1stepあたりの移動量は小さくなるでしょうし

ラック&ピニオンやインデックス回転
であれば減速機をつけることが多くなります。
するとさらに分解能が細かくなり十分なことが多いです。

それでも
不十分であればマイクロステップも一考の余地はあります。

 

 

⑤つまり・・・

管理人自体はステッピングモーターの位置決め精度が低い
というのは

ステッピングモーターの特性やデメリットを
位置決め精度と混同してしまっているものなのか?

と思うのですがどうでしょうか?

 

繰り返し停止精度については
装置によるとは思いますが

 

ステッピングモーターのデメリットである以下は

  • オープンループ制御
  • 分解能の低さ

あくまでサーボモーターと比較した場合の
位置決め機能のデメリット

と言うべきであり、

位置決め精度が低い
というべきではないと思います。

その位置決め機能のデメリットにしても
あくまでサーボモーターと比較した場合のものであり

通常の運用であれば気にするものでもなかったり
対応が可能なのです。

 

ただ 運用に際しては
ステッピングモーターのデメリットである
消費電力の多さはきちんと把握した上で使用
すべきです。

 

本記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

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