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機械設計歴20年以上のtsurfと言います。
今回は以下に関する記事です。
【機械設計の物理】
選定計算の理解に必須の「力の基礎」と「単位:ニュートンとは」
⇩本記事は機械設計初心者の方で以下の方にオススメです⇩

未経験機械設計者
モーターやエアシリンダの
選定計算ができたい
でも力学の基礎がわからない
⇩本記事を読むと以下が わかります⇩
力とは何かを
高校物理から
わかりやすく説明します
①力の正体
基本的な力の解説
力の正体は、以下です。
ある質量のものをある加速度で加速させるもの
実は単純な等速直線運動であれば、
基本的には力は必要がありません。
これは、
宇宙空間で物体を動かすことを、想定すればわかりやすいのですが
無重力で浮遊している物体を、ある方向へ初速0からある目標速度で
動きださせるとき(=加速させる時)に力が必要ですよね?
そして、一度 ある速度で動きだして等速直線運動をし始めれば
力を必要とせず、その速度で永遠に等速直線運動をします。
これを慣性といいます。
物体を加速させる時に必要な力の式は 以下になります
Fa=m × a
m:物体の質量 (単位:Kg)
a:加速度 (単位:m/sec²)
単位はN:ニュートンで 力の単位となります
この式を見ると 例えば 14(N)で動かすと言った場合
- 14Kgのものを動かす場合 1m/s2で動かすことが可能
- 2Kgのものを動かす場合 7m/s2で動かすことが可能
このように
力とは、同じ大きさでも 動かす物体の質量や 加速度によって
動かせる質量や、加速できる大きさが異ってきます。
例えばIAIのロボシリンダーなどで
可搬質量が大きくなると、加速度が小さくなるのは
これが理由なのです。
力の例外
さきほど
力とは 動かす 質量によって 加速度も異ってきます
と言いました
しかし後述する重力は違います
・・・・・②の重力の項で解説します
地球上での力
上記で
単純な等速直線運動であれば 基本的には力は必要がありません
と記載しました
しかし、
地球上では 車を等速直線運動をさせるのに
アクセルを踏み続けて 推進力を得なくてはいけないですよね
何故でしょうか?
それは 摩擦があるからです
・・・・・③の摩擦の項で説明します
②重力
重力とは 以下の図のように
この地球上にある全ての物体に、物体の大きさや質量に関係なく
加速度 9.8(m/sec²)が地球の中心に向かって
発生することによるものです。
重要なことなので もう一度言いますが
物体の大きさや質量に関係なく
等しく9.8(m/sec²)の加速度が地球の中心に向かってかかります
鉄球でも羽毛でも関係なく
地表への落下時間が同じと言いますが、
これが理由なのです。
ただし、
実際の羽毛の落下速度が遅いのは、空気抵抗があるためです。
真空環境下では落下速度は同じです。
重力は厳密には力ではありません。
しかし、結果的に地球の中心に向かっての限定ではありますが、
ある質量のものを 9.8(m/sec²)で加速させるという
力と等価の物理現象です。
なお 余談ですが、よく月の重力は 地球の1/6と言いますが
正確には、月の重力加速度が地球の1/6です
重力により発生する力の式は以下となります
Fv=m × g=9.8m
m:物体の質量 (単位 Kg)
g:重力加速度 (単位 m/sec²)
=9.8(m/sec²)
よって垂直搬送など m(Kg)のものを持ち上げるには、
最低限の力として9.8m(N)の推力が必要であることがわかります。
③摩擦力
等速直線運動であるにも関わらず、
車はアクセルを踏み続ける理由を解説します
宇宙空間では、空間に浮かんでいるので摩擦がありません。
しかし 地球上では、
重力によって、地表に引っ張られ 地表に接しています。
よって、
以下の図のように進ませたい方向に対して、
逆向きの摩擦力が発生します。
摩擦により発生する摩擦力の式は以下となります
Fh=μ×m×g=μ9.8m
μ :摩擦係数 (無次元)
m:物体の質量 (単位 Kg)
g:重力加速度 (単位 m/sec²)
=9.8m/sec²
摩擦係数μは だいたい0.1から0.3で計算します
ですので 摩擦力は重力と比べると はるかに小さいです
皆さんも経験があると思いますが
横スライド機構のあるファイルや本がいっぱい詰まった本棚が
持ち上げようとすると 一人では絶対無理です。
しかし、
横スライドであれば 一人でもできるのは これが理由なのです
④地球上で物体を動かすために必要な力
物体を動かす力の考え方の基本
エアシリンダー や ボールネジ機構のモーターなどの
駆動機構で物体を、垂直搬送や水平搬送で 直動させるための
力の基礎を解説します。
重力や摩擦力のみを計算する方を見かけますが、
それだけではダメです。
なぜなら、 重力や摩擦のみの計算では、
動き出させる力である加速力を考慮していないからです。
垂直動作に必要な力 Fsv(N)
垂直動作に必要な力の式はは以下となります
加速させる力と 重力に打ち勝つ力が必要なことがわかります
(Fsv=Fa+Fvより)
Fsv=(m × a) + (m × g)=m(a+9.8)
Fa:加速力 (単位 N)
Fv :抗重力 (単位 N)
m:物体の質量 (単位 Kg)
g:重力加速度 (単位 m/sec²)
=9.8m/sec²
水平動作に必要な力
水平動作に必要な力の式はは以下となります
加速させる力と 摩擦に打ち勝つ力が必要なことがわかります
また 摩擦は重力と比べると非常に弱い力であることがわかります
(Fsh=Fa+Fhより)
Fh=(m × a) + (μ × m × g)=m(a+μ9.8)
Fa :加速力 (単位 N)
Fh :抗摩擦力 (単位 N)
μ :摩擦係数 (単位 無次元)※
m :物体の質量 (単位 Kg)
g:重力加速度 (単位 m/sec²)
=9.8m/sec2
※補足 摩擦係数について
LMガイドなど スライドテーブルとレールの摩擦係数は
カタログ値で0.05などです。
しかし、
実際の計算では摩擦係数はLMガイド使用時でも0.1で計算します。
理由は 以下です
- レール2本平行使いの場合 平行に設置する際の平行度の誤差
- レール連結する場合の組付け誤差
⑤地球上での加速運動と慣性運動での必要な力の違い
この章では 摩擦力と重力を外部負荷力として表現します
重力加速度の掛かる地球に存在するかぎり
以下の条件が成り立ちます。
- 加速運動中だろうと等速直線運動だろうと
物体を運動させるためには、常に外部負荷力が掛かります
- 加速運動中は加速力と外部負荷力が必要
- 等速直線運動時には外部負荷力のみ必要で、加速力は必要ない
よって 以下が言えます
運動の種類 | 必要な力 | ||
---|---|---|---|
加速運動 | ➪ | 加速力 | 外部負荷力 |
等速直線運動 | ➪ | 無し | 外部負荷力 |
よく車の運転などがわかりやすいですが、
動き出し(加速運動)は、
減速比の大きいギアで アクセルを多めに踏まなくてはなりません。
しかし、
加速が終わった後の車の速度維持(慣性運動)は
摩擦力は小さいので、
減速比の小さいギアで かつ アクセルは少し踏むだけでいいですよね?
結果として
高速道路は燃費がよく 街中は燃費が悪いのは これが理由なのです。
⑥まとめ
力とは
- ある質量のものを、ある加速度で加速させるもの
- 力は、質量 × 加速度で求められる。
- つまり、力が一定であれば
質量の大きさに、加速度は反比例する。
加速度の大きさに、質量は反比例する。
重力とは
- 地球上にある全ての物体に、物体の大きさや質量に関係なく、
地球の中心に向かって9.8m/sec²の加速度が掛かる現象
地球に存在する限り、
- 加速運動でも、等速直線運動でも摩擦力や重力の影響を受ける。
- 加速には加速力が必要だが 等速直線運動には加速力は必要ない
従って、以下が言える
- 加速運動時は加速力と外部負荷力が必要となり
- 等速直線運動時は 外部負荷力のみが必要
本記事は以上です
最後まで お読みいただき ありがとうございます