tsurfの機械設計研究室

サーボモーターやエアシリンダの選定計算なども扱っている技術ブログです

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【機械設計の物理】慣性力とは?(ガイドや短軸ロボ選定時の動的モーメント計算の基礎知識)

本ブログの御訪問ありがとうございます。
機械設計歴20年以上T.surfと言います。

今回は以下に関する記事です。

 

【機械設計の物理】慣性力とは?
ガイドや短軸ロボ選定時の動的モーメント計算
のための基礎知識

  

⇩本記事は以下の方にオススメです⇩

機械設計初心者

ガイドの選定とかでチョッと
理解できないところがあって・・・

 

⇩本記事を読むと以下が わかります⇩

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管理人TSURF

なるほど
慣性力がわからないと
動的モーメントなど
理解しづらいですね。
慣性力を解説します。

 

 

①結論 慣性力とは

慣性力とは、加速や減速した方向に対して
反対側に受けるように感じる力のことです。


これは、見かけ上の力で実際には存在しないのですが
物理的には、力と等価の作用として考えます。

機械設計では、あまり意識しないと思われるものですが
これを知って、以下の計算の原理を理解しましょう。

  • ガイドや短軸ロボットなどの動的モーメント

 

  • 真空吸着の吸着力

 

 

②加減速時に起こる現象

慣性力は加速や減速の時のみに掛かります。
等速直線運動になった場合には発生しません。

電車や車もそうですが、加速や減速の時にこの力を感じ、
特に加速が終わって等速走行時は感じませんよね?

 

では、なぜ加減速の時にこのような力を感じるのでしょう?
それを解説します。

 

今、停止している電車にAさんとBさんが電車に乗っています。
そして、電車が発車し、加速度a(m/sec²)で静かに加速しました。

 

そして加速してt(sec)後、電車がまだ加速中にBさんが
ジャンプをしました。

ジャンプをする前 Bさんは電車との床の摩擦により
一緒に加速されていました。

ですので、ジャンプした時のBさんの速度V1は
V1(m/sec)=a(m/sec²)・t(sec)
となります。


―しかし、Bさんはー
ジャンプした時点で電車との摩擦がなくなるので
加速はされず、このV1の速度を維持します。

 

しかし、Bさんがジャンプしている間も
―電車と電車に座って摩擦を受けているAさんはー
加速度a(m/sec²)で加速していきます。

 

上記の理由から、
Aさんから見た Bさんの動きは、以下のようになります。

Bさんがジャンプを開始して着地するまでの時間を1.5secとします。
すると、
Bさんが着地した瞬間の電車とAさんの速度V2は
V2(m/sec)=a(m/sec²)・(⊿t(sec)+1.5(sec))
となります。

 

Bさんの速度が
V1(m/sec)=a(m/sec²)・⊿t(sec)

のままなので、V2≧V1となっていることがわかります。

 

つまり、―Aさんから見るとー
ジャンプしたBさんは、
加速方向とは
逆向きの力を受けているように見えます。

 

 

③慣性力とは何なのか?

電車の中のAさんの観測

上述しましたが、

―電車内のAさんから見るとー
電車内でジャンプしたBさんは、
加速方向の逆向きに力を受けているように見えます。

 

電車の外の我々から見ると

しかし、上記の現象を
電車の外にいる我々から見ると・・

  • ジャンプしたBさんは速度V1を維持している
  • Aさんが加速している

上記の結果 引き起こされた当然の現象であり、
Bさんが、力を受けているわけ
ではありません。

 

つまり慣性力とは

電車の外から見ている我々の観測通りに
Bさんは力を受けているわけではありませんが、

Aさんから観測される
Bさんが受けているように見える
見かけ上の力を慣性力と言います。

 

たしかに見かけ上の力であり、実際の力ではないものの
慣性力は力と等価の作用であり、物理学的に力とみなして
力と同じ物理計算をしてもかまいません。

 

なので、
Aさんから見た Bさんに掛かる慣性力F”(N)の大きさは
電車の加速度がa(m/sec²)なので
F”(N)
Bさんの質量 M(Kg)x電車の加速度 a(m/sec²)
となります。

 

 

④Aさんも受けている慣性力

この時Aさんも慣性力を受けています。

Aさんは、ジャンプするBさんほど露骨に移動はしませんが
Aさんも微小時間でみた場合、常に慣性力を受けています。

Aさんを微小時間で見た場合
その時の速度⊿Vを維持しようとします。

しかし、
電車の加速がそれを許さずAさんを強制的に加速させます。

  • 速度維持をしようとする慣性
  • 速度維持を許さない加速

上記のギャップが慣性力です。

 

このAさんの状態では、お尻と靴の部分は接地して
摩擦により固定されているので、感じる慣性力は
それほどでもないですが、上半身は加速をしている逆の方向に
持っていかれるような感覚がするはずです。

つまり、加速している物体全てが、
常に慣性力を受けているということです。

 

 

⑤等速直線運動の場合

電車が加速を完了して速度維持のフェーズに入りました。
この時の速度をV3とします。

等速直線運動では、Bさんがジャンプして着地をしても
電車やAさん、Bさんも全てが速度V3のままです。

なので、Aさんから見たBさんのジャンプの動きは
以下となります。


時速300Kmで走ろうが、時速400Kmで走ろうが
等速直線運動の中では

真上にジャンプしたものは、

  • 真上にジャンプしたことになり、
  • 真下に落ちてくる

ということになります。

 

 

⑥慣性力の計算

例えば 以下の単軸ロボットのスライダー部に
ワークと搬送ジグを固定した場合

ワークと搬送ジグの合計に掛かる慣性力を求めましょう。
以下とすると・・・

スライダー動作の加速度 a (Nm)
ワークと搬送ジグの
総重量
M (Kg)

ワークと搬送ジグからなる
搬送機構部に掛かる慣性力F”(N)
F”(N)=M(Kg)×a(m/sec²)

となります。

 

そして、ガイドや短軸ロボットの選定時に
この慣性力F”が原因による動的モーメントが働きます。
動的モーメント(N・m)=慣性力F(N)×ガイド基準からの距離(m)

以下の記事を御参照願います。

 

 

⑦慣性力が影響するその他の設計事例

真空吸着の設計に必要な場合があります。
以下の記事を御参照願います。


 

⑧まとめ

  • 加速時には慣性力が掛かる
  • 慣性力は見かけ上の力であり、実際の力でなない
  • しかし、物理学的には力と等価とし扱う
  • そして力として扱っても問題はない
  • この慣性力がガイドに掛かる動的モーメントとなる。

 

本記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

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